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おっさんノングラータ

(B04)儲かるから戦争協力|『そして、メディアは日本を戦争に導いた』感想(★★★★★)

(B04)儲かるから戦争協力|『そして、メディアは日本を戦争に導いた』感想(★★★★★)_d0252390_9364918.jpg半藤一利・保阪正康両氏の対談集。内容は予想通りと言えばそれまで何ですが、新しい発見もあって楽しめました。

大前提としてあるのが、新聞の偏向報道──朝日新聞が顕著な例ですが、戦前・戦中の戦争礼賛記事。あれは、軍部の圧力を受けて「やむを得ず」そういう紙面づくりがされたという論調ですが、売れるから新聞が煽ったという側面があるようです。という点に斬り込んでいるところにまずは星一つ。今も昔も大衆は見たいと思うものしか見ないのです。

もちろん当時は検閲もあったし、在郷軍人会による不買運動もあって、反戦的な紙面にすることはできなかった。売れないから続けられない。となると、座して死を待つか、国外逃亡するか(亡命というシステムはなかったのですが、満州に逃げたりはしたそうな。そこで何ができるわけではないにしても)、売れるものをつくるか。最初の選択肢以外は、ジャーナリストとしての死を意味するわけです。

半藤氏が警鐘を鳴らしているのは、何かあると雪崩を打ったように一つの意見に集束しようとする国民性。立ち止まって熟考することを許さず、一つの総論に突き進んでいきます。ナチュラルな全体主義とでも言うんでしょうか。その流れに乗ったのが戦前の新聞で、雪崩のスパイラルを起こしました。今はインターネットという便利な道具がありまして、耳障りの良い情報だけ取捨選択してクラスタ化、セルフ雪崩を起こしがちなのでより危険だなあと痛感させられました。星一つ

半藤氏は、今の日本が昭和一桁代に似てきている、国家が教育、情報の統制を始めたら気をつけなはれと書いています。このへんは大いに賛同するところで星一つ。「歴史を振り返ればわかるように、権力側はきっと(ジャーナリズムを)懐柔しようとします。それを承知しておいて、決して服従しないことが大切です。それでなくとも、言論が不自由になりつつあるんですから、こちらから屈従するのは間違いなんです」

ナショナリズムの高揚についても述べられていますが、これも賛同するところで、よく利用する書店に「嫌韓コーナー」があって驚かされたものです。もっともそのすぐ横にきっつい「愛国コーナー」があったので、書店員の皮肉かもしれませんが。とは言え、中韓政府の政策を見るとわかるように、反日を叫ばないと政治家が支持を得られないような状態に陥ってしまうと、これまた負のスパイラル。「思想にはまり込んで疑わないのは、いちばん楽なんですよ。全てが一元的に割り切れるから」との保阪氏の言葉は正しいでしょう。星一つ

二人、特に半藤氏は、自分はもう歳であり10年先に生きていないかもしれないので、ああしろ、こうしろとは言えない、と割り切っており、責任ある大人の態度というやつです。歴史に学べというアドバイスしかできない。いや本当にその通り。発言力のある人は歴史に学んだことを発言し、そうでない人もいろんなことを考えましょう。ヤスの母ちゃんのように。いろいろ考えさせられる良書でした。星一つ






by non-grata | 2014-01-31 11:42 | 読書

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