(B02)昭和二十五年最後の戦死者/城内康伸(★★★★★)
海上自衛隊の掃海部隊が海外派遣されたのは湾岸戦争が初で、1991年3月にペルシャ湾へ遠征しています。掃海部隊を海外派遣したのって第一次世界大戦以来じゃないかと当時は思っていましたが、いやいや、朝鮮戦争にもこっそり参加していたんですね。しかも38度線を越えて。戦争放棄を謳っていたものだから、当時は、いや今もあまり大っぴらにしていない史実です。という歴史の襞に埋もれてしまいそうなエピソードに関する貴重な証言を集めてくれたことにまずは星一つ。
太平洋戦争で日本の主要都市がB-29の空襲によって灰燼に帰したのはご存じの通りですが、空襲による直接的被害の他、機雷散布による海域封鎖という間接的被害も大きかった。これを「飢餓作戦」と言います。で、厄介なのは機雷は戦後になっても残っていることで、これを誰かが排除しなければなりません。実際、戦後になって民間船が触雷、失われなくてもいい人命が失われた事件が多発しています。機雷は散布後、一定期間が経過すると無力化しなければジュネーブ条約違反らしいですが、適当です。という機雷戦に関していろいろ学べたことに星一つ。
機雷をばらまいた張本人のアメリカが掃海してくれるはずもなく、元海軍の人員で構成された掃海チームが近海の機雷を排除していきます。その後、1950年に朝鮮戦争が勃発。太平洋にまともな掃海部隊を持たなかったアメリカ軍から海上保安庁に掃海が要請されます。
釜山まで追い詰められた国連軍ですが、仁川に上陸、北朝鮮軍の背後を取って逆襲し、たちまち38度線まで押し返します。その後、東海岸の元山への上陸作戦が企図され(実行はされませんでした)、その水域に漂うソ連製の機雷の掃海が、特別掃海隊に命じられます。国内政治的にも掃海隊派遣がすんなり認めれるはずもなく、「戦争を放棄したのに何故また戦地へ」という隊員の疑問に満足な回答も与えられず、アメリカ様に言われたから、あるいは講和条約に響くから、との理由でとりあえず送り出される隊員の非業、にもかかわらず任務となるときっちり仕事をしてみせるプロフェッショナリズムに星二つです。
しかし、不幸にも掃海艇の1隻が触雷、轟沈して1名の死者を出します。それがタイトルにある「最後の戦死者」。その後、掃海隊の一部が任務続行を拒否して帰還、アメリカ軍との緊張のやり取りがあります(背景を語らず、任務拒否という事実だけをもって後に政治利用しようとした輩がいるとか)。
朝鮮戦争への参戦、それがこっそり行われたこと、最前線の隊員たちの苦難、外国軍(韓国を含む)からの感謝など、殆ど伝えられてこなかった昭和史が重みを持つ当事者の証言によって描き出されます。星一つ。本書を読むと、もしかするとなあなあで朝鮮戦争に参加した事実が、今もって太平洋戦争を総括できない理由になっているのではないか、だからこそ今も、為政者にとって都合がいいように何ごとも「拡大解釈」が行われているのではないかと空恐ろしく思えてしまいます。
太平洋戦争で日本の主要都市がB-29の空襲によって灰燼に帰したのはご存じの通りですが、空襲による直接的被害の他、機雷散布による海域封鎖という間接的被害も大きかった。これを「飢餓作戦」と言います。で、厄介なのは機雷は戦後になっても残っていることで、これを誰かが排除しなければなりません。実際、戦後になって民間船が触雷、失われなくてもいい人命が失われた事件が多発しています。機雷は散布後、一定期間が経過すると無力化しなければジュネーブ条約違反らしいですが、適当です。という機雷戦に関していろいろ学べたことに星一つ。
機雷をばらまいた張本人のアメリカが掃海してくれるはずもなく、元海軍の人員で構成された掃海チームが近海の機雷を排除していきます。その後、1950年に朝鮮戦争が勃発。太平洋にまともな掃海部隊を持たなかったアメリカ軍から海上保安庁に掃海が要請されます。
釜山まで追い詰められた国連軍ですが、仁川に上陸、北朝鮮軍の背後を取って逆襲し、たちまち38度線まで押し返します。その後、東海岸の元山への上陸作戦が企図され(実行はされませんでした)、その水域に漂うソ連製の機雷の掃海が、特別掃海隊に命じられます。国内政治的にも掃海隊派遣がすんなり認めれるはずもなく、「戦争を放棄したのに何故また戦地へ」という隊員の疑問に満足な回答も与えられず、アメリカ様に言われたから、あるいは講和条約に響くから、との理由でとりあえず送り出される隊員の非業、にもかかわらず任務となるときっちり仕事をしてみせるプロフェッショナリズムに星二つです。
しかし、不幸にも掃海艇の1隻が触雷、轟沈して1名の死者を出します。それがタイトルにある「最後の戦死者」。その後、掃海隊の一部が任務続行を拒否して帰還、アメリカ軍との緊張のやり取りがあります(背景を語らず、任務拒否という事実だけをもって後に政治利用しようとした輩がいるとか)。
朝鮮戦争への参戦、それがこっそり行われたこと、最前線の隊員たちの苦難、外国軍(韓国を含む)からの感謝など、殆ど伝えられてこなかった昭和史が重みを持つ当事者の証言によって描き出されます。星一つ。本書を読むと、もしかするとなあなあで朝鮮戦争に参加した事実が、今もって太平洋戦争を総括できない理由になっているのではないか、だからこそ今も、為政者にとって都合がいいように何ごとも「拡大解釈」が行われているのではないかと空恐ろしく思えてしまいます。
by non-grata
| 2014-01-27 11:23
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