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おっさんノングラータ

年取れば変化球を打てるようになると信じてた|『人生の特等席』感想

年取れば変化球を打てるようになると信じてた|『人生の特等席』感想_d0252390_757741.jpg長い人生、直球ばかりが飛んでくるとは限らない。時には緩い変化球が投げ込まれて対処できないことがある。「手が泳」いでしまうというやつだ。誰もかれもが唐突に直面するカーブを打てるわけではない。打てないと開き直って打席に立ち続けるのか、打とうと努力するのか、それとも諦めて打席を離れるのか。大きな決断だ。

久々にクリント・イーストウッドが主演のみを務めた『人生の特等席』は、文字通りカーブを打てない超高校級バッターのドラフト指名を縦軸に、それに関わる人々に転機が訪れ、どう対処するかという物語。原題の「カーブ」がダブル・ミーニングで使われる。メジャー・リーグり伝説的スカウトのガス(クリント・イーストウッド)に最初に投げ込まれるのは、緑内障による視力低下。スカウトとしては致命的で、引退を迫られることになる。そして娘ミッキー(エイミー・アダムス)との確執が表面化。ガスはそのどちらとも──これまで通り──かわそうとする。

一方でミッキーは、これまでかわしてきた変化球に真っ向から勝負を挑む。試合が終わったグラウンドで、ガスがボールを投げ、ミッキーがその初球を派手に打ち返すシーンが象徴的……なのだが、そこからすんなりと人生の勝負に片がつかないのは、20年という時間の重さか。

この二人の絡むのが、かつてガスにスカウトされた「炎のストレート」(だったよね)を投げ込む好投手ながら、連投が祟って肩を壊し、トレードに放出されたジョニー(ジャスティン・ティンバーレイク)。ドラフト絡みの誤解によって、ミッキーとのアフェアを「変化球」だと勘違いしてしまう。実際はど真ん中のストレートだったのだが。

2時間の映画として捉えると、父娘の関係が修復するまでのぎこちなさにいらつかされるが、二人が濃密な時間を過ごすのが実は劇中が初めてであることを考えればやむを得ない。そのぶん、伏線回収から「ピーナッツのツケ」を支払わせるまでが慌ただしいのがご都合主義に感じられるが、これぞアメリカン・ドリームって感じは嫌いじゃない。

『人生の特等席』という邦題を非難する人がいて、確かに原題からは乖離しているのでその気持ちがわからないわけではないけれど、ミッキーが終盤で口にする台詞だし、家族で一緒にいられるのが子どもにとって何よりの特等席であることに気づかされるわけで、そんなに悪い邦題じゃない。人生のベテランと一緒なら、変化球打ちのアドバイスももらえるかもしれないしね。






by non-grata | 2012-11-30 08:22 | 映画

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