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おっさんノングラータ

ファシズムですらなかった|『未完のファシズム』感想

3キャリアiPhone 5電池持ち検証!au版は1.5倍長持ち、SoftBank版はドコモ(SIMフリー版)とほぼ変わらない事が明らかに
auもSoftbankも「自分のほうが長持ち」と主張しているし、実際のところはどうなんでしょうね。以前、会社から支給された3Sを使っていましたが、あまりに回線が脆弱なのと、バッテリーがもたないのに辟易しました。個人では長年emobileを使ってきましたが、Softbankの買収話が出たのを機に、auのiPhone持ちになったのでした。




ファシズムですらなかった|『未完のファシズム』感想_d0252390_10123523.jpg近代日本が行った戦争で、うまくいったものの代表は日露戦争、失敗に終わったのは太平洋戦争になるだろう。そこで見落とされがちなのが、その間に行われた第一次世界大戦。日本は連合国として参戦し、青島でドイツ軍と戦っている。本書では取り上げられていないが、海軍もインド洋と地中海に船団護衛の艦隊を派遣している。

第一次大戦は最初の総力戦として知られるが、そこで日本は何も学ばなかったのか? だから日露戦争の僥倖を実力と勘違いしたまま、ずるずると日中戦争、太平洋戦争へと突入していったのか?

答えは否である。旅順攻略では、日本軍は砲弾の代わりに肉弾を使って要塞を落とした。他に手がなかったからである。しかし青島攻略では、敵陣に十分すぎるほどの──なかなか歩兵による突撃を命じない司令官神尾中将を新聞が「臆病」と論じるほどの砲撃を行い、敵防御火力を封じ、敵兵の士気を阻喪させるという、近代戦では真っ当な戦術が用いられた。またこの作戦では航空機も投入されている(このエピソードは加山雄三主演で映画化もされている)。

また阿南惟幾(これちか:当時の階級は中佐)をはじめ、観戦武官として陸軍将校が大戦中に戦場に赴いている。これからの戦争は物量戦になるということが、嫌でも理解できたはずである。

だが、日本は物量戦に耐え得る「持てる国」だろうか? 資源も工業力もない「持たざる国」である。その「持たざる国」がこれからの戦争を戦うにはどうすれば良いだろうか? ということで、陸軍内で考え方が真っ二つに分かれたわけだ。

1928年、「統帥綱領」が大幅に改訂され、日本陸軍は短期決戦と包囲撃滅戦を行うことが命題とされた。この改訂を行った中心人物は「作戦の鬼」と呼ばれた小畑敏四郎で、大戦中はロシア軍と行動を共にした。1914年のタンネンベルク会戦をよく研究しており、寡兵でも大軍を包囲殲滅したレア・ケースを引き合いに出して、これを陸軍のスタンダードに引き延ばそうとした。持たざる国が持てる国と戦うのならば、補給や生産能力が問われる前に決戦をして勝利を収めなければならない。そのためには包囲撃滅戦しかない。

何とも勇ましいが、この考え方には明文化されなかった「密教」がある。それは、長期戦になったら敗北は免れないので、持てる国とは戦争はしないという前提だ。けれど、軍人なのでこんなことは言えないし書けない。この暗黙のルールが共通認識で残っている間は良かったが、二・二六事件で皇道派が追放されてからは、密教部分が失われ、「統帥綱領」が一人歩きするようになる。

もう一つの考え方は、「日本が持たざる国なら持てる国にしよう」。石原莞爾である。満州を資源・産業基地として発展させ、また日本人だけでは足りないので「五族協和」を実現して、30年後くらいに持てる国に対抗しようと考えた。詳しくは本書に譲るが、1930年代の日本の経済成長率は4.8%、アメリカが0.2%。国内総生産は、アメリカを100としたら日本は19。同じ成長率が続いたとすると、何と1974年には日本の国内総生産はアメリカと肩を並べるのだ。こちらは統制派。

皇道派も統制派も少なくとも昭和初期の日本には持てる国と戦う力はない、戦うべきではないと考えていた。しかしどこの国と戦争するのかを決めるのは政治であり、大日本帝国憲法は軍人の政治的振る舞いをはねつけるようにできていた。さらに思想的軍人は排除される運命となり、「統帥綱領」も満州も、小畑、石原の思惑とは異なる育てられ方をしたのである。

結局、持たざる国が持てる国と戦争をするはめになった。小畑が考えた「統帥綱領」に従えば短期決戦になるが、敵を引きずり出してのバックハンド・ブローがその本質であった。確かに短期決戦は狙ったが、実際には日本軍が引きずり出されて痛撃をくらった(ミッドウェイ海戦)。そして石原が危惧した通り、日本に長期戦を戦う国力はない。しかし勝てないとは言えない──そこであらゆることに「精神力」という下駄を履かせることにしたのである。その先に待っているのは玉砕&特攻。「真鋭」をもって敵を心肝寒からしめれば、必ずや敵は戦意を喪失し、戦意がなくなれば持てる国も戦争に負けるというトンデモ理論。

まとめると、第一次大戦ショックで危機感を持った軍人たちがいた→皇道派の本音は持てる国とは戦争しない、統制派の考えは、自ら持てる国になるまで戦争しない→思想を持つ軍人は排除されたし、戦争をするしないを決めるのは政治家だ(思想、教養なき軍人が厄介な存在だということは、『失敗の本質』でも述べられている)→日本の法制度は独裁者をつくりにくい、また即断即決しにくいシステムだった→そこで東条は自ら複数のポストを兼任することでスピード感を持って物事を決めようとした&手っ取り早くできる思想弾圧は行った→うまくいかない&反対派の抵抗を受けてファッショ実現せず→精神力をもってすれば戦争に勝てることにしよう、ということになるだろうか。持たざる国が挙国一致する体制もとれなかったのだから、そりゃあ戦争に勝てるわけはありません。






by non-grata | 2012-11-16 12:08 | 読書

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