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おっさんノングラータ

静かなる大恐慌

静かなる大恐慌_d0252390_15443947.jpg歴史は繰り返されると言うが、グローバル化とその反動も繰り返され、これからがその転換期になる可能性がある。本書の指摘を受けてなるほどと思ったが、大恐慌の直前まではグローバル化の時代であった。例えば日本。明治維新直後は対GDP比で見る資本移動の割合は0.6%に過ぎなかったが、1890年から1913年までは2.4%に増大している(日露戦争の影響が大きい)。

19世紀末から現代までの資本移動を考えた時、1914年までグラフは右肩上がり、第一次大戦で大きく落ち込み、そこから大恐慌まで右肩上がり、まだ第二次世界大戦で落ち込み、戦後はブレトンウッズ体制の下、緩やかに上昇曲線を描き、変動相場制になってから一気に伸びた。

行き過ぎたグローバル化で経済が行き詰まった後、待ち構えているのは世界大戦か? 過去2度はそうだったが、「マクドナルドがある国では戦争が起きない」と主張し、「デルの紛争回避論」を唱えるフリードマンによればそうはならない。そうかもしれないが、保護主義には傾くだろう。

これについてはダニ・ロドリックの『グローバリゼーション・パラドックス──民主主義と世界経済の未来』を取り上げ、各国は「グローバル化」「国家主権」「民主政治」の3要素のうち2つしか選択できない、としている。具体的には、

グローバル化と国家主権を選択 今の中国みたいなものか。
グローバル化と民主政治を選択 今より結びつきの強いEU。ある種の理想ではあるが、各国が国家主権を手放すのは容易ではない。
国家主権と民主政治を選択 戦後のブレトンウッズ体制で、国内外の状態を安定させることを目的とする。ケインズが言うところの「国際主義」がこれに当たり、狭小なブロック経済でも保護主義でもない、国内的にも国外的にもバランスを取ることが求められる。

理想は3番目だが、現実は最初の選択肢が多くの国で採択されており、日本も例外ではない(野田政権下でTPP参加に傾いている)。グローバル化は資本を流動させ、集中しやすくなり、それはバブルを生む。バブルはやがてはじけ、経済に大きな打撃を与え、その解決のために極端な保護政策をとる国が出てくる。今のG20が新たな経済の枠組みをつくることができれば良いが、第二次大戦後と異なり、政治も経済もばらばらの段階にある国同士が共通のルールを策定するのは不可能だろう。

将来を予測するのは困難だが、「資本主義は終わらない」「低成長時代が続く」と著者は読む。それを前提とした経済社会のビジョンを持たねばならず、それはケインズの言う「投資の社会化」である。一般的にそれは、政府による公共投資を指すが、著者はさらに解釈を拡大して、既に社会に存在する「資本」への投資を提案する。正直なところイメージはわかなかったが、その国の歴史や文化に根付いた資本──人間関係など貨幣を媒介しない国民資本を経済に組み込むというのだ。

再江戸化、ということか。






by non-grata | 2012-10-01 17:16 | 読書

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