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おっさんノングラータ

しみじみ日本・乃木大将

しみじみ日本・乃木大将_d0252390_13141690.gifものすごく久しぶりに舞台を見た。産経新聞の紹介記事で知った『しみじみ日本・乃木大将』である。その記事に何と書いてあったのか忘れたが、明治天皇につき合って殉死した乃木希典の話が、「しみじみ」という語感から連想されるようなイイ話に果たしてなるのか、非常に興味があった。

いやしかし、天皇制を批判する──実際、舞台でも明治天皇の扱いがひどかった井上ひさしの作品を、産経新聞がよく取り上げたものだ。読売もしかり。YOMIURI ONLINEで以下のようなレビューが見つかった。

[評]しみじみ日本・乃木大将(こまつ座&ホリプロ)

明治天皇が崩御し、乃木夫妻は殉死の覚悟をする。夫妻の行動を怪しんだ飼い馬たち5頭が前後に分裂して(1頭あたり2人で演じているのだ)、乃木希典の半生を振り返り、本当に殉死する覚悟なのか否か、そして何のために殉死するのかを議論するという内容だ。お芝居そのものは重苦しいものではなく、洒落も効いて場内は笑いも絶えなかった。

ただ、描かれている内容は辛辣。乃木希典が殉死する(おまけに夫人まで道連れにされる)だけが「型」ではなく、それは日露戦争後の日本全体の示唆でもあった。例えば連隊旗の話。日本陸軍は連隊旗を敵に奪われるのを何よりの恥辱と捉え、連隊旗を守るために連隊そのものが危機にさらされた、という本末転倒なエピソードがあるくらいである(ノモンハン事件他)。また、日露戦争で日本がどうにか勝利できたのは、決戦地点に適切に火力を集中する努力を払ったからであり、決して精神力で敵に勝っていたとか、曖昧な理由ではない。日本海海戦も然り。ところがその後の太平洋戦争では、何故か白兵戦至上主義に逆戻りし、揚げ句は神風頼みの戦いを行うことになる。

一銭五厘で集められた兵士たちは下士官の鉄拳制裁によって、銃後の日本人は隣組の制度によっていったん「何者でもない者」にされ、山県&児玉の「宝塚コンビ」がつくった乃木の「型」にはめられた。乃木の劣化コピーの大群が、日本を日露戦争から太平洋戦争へと突き動かしたのである。

馬は前脚と後ろ脚で一対にならなければならないのに、意見の相違から対立してしまう。前脚は言う。自分がいないと、馬はどちらを向いて進めばいいのかわからない。だから自分は偉いのだ、と。果たしてそうだろうか。後ろ脚には後ろ脚の役割がある。例えば生殖器がついているのは後ろ脚のほうだ。前脚だけでは子孫を残せないではないか。両者が対立して相互のより良い在り方を模索しているうちは救いがある。だが後ろ脚が前脚を盲信し、前脚が進むべきではない方向に進んだらどうなるのか?

「しみじみ」考えさせてくれる芝居だった。



by non-grata | 2012-08-06 14:01 | チラ裏

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