おっさんノングラータ

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(M14)エンドロールが熱かった|『キカイダーREBOOT』感想

 子どもの頃は『仮面ライダー』ならライダーマン、『キカイダー』ならハンペン(服部半平)と、フリーランスな立場で主人公たちを助ける立場に憧れていました。あれから40年、思いっきり宮仕えの身ですが。ちなみに「はんぺん」なる食べ物が存在することを知ったのは成人した後のこと。

d0252390_14561327.jpg 『キカイダーREBOOT』の企画が持ち上がったのは、テレビ放映が開始された1972年から40年後の2012年のこと。KADOKAWA代表取締役専務の井上氏の発案で始まった企画ですが、リンク先のインタビューにある通り、40周年はちと遅い印象があります。30周年と違ってターゲットを絞りにくい──30周年なら親子2世代狙い撃ち、という作戦が取れます。40周年でもそれはできないことはないけれど、子の想定年齢は高くなる。普通に大人の鑑賞に堪える作品にしないといけないわけです。

 ああ、小さな子ども向けの作品が「子供だまし」でいいわけはなく、真面目につくられた作品は世代に関係なく評価されるべきなのですが。念のため。

 「『キカイダー』は“ダメさ加減”がたまらない」のは確かにそうで、ヒーローなのに完全ではない、ギルの笛に惑わされる、葛藤もある、すぐに壊れる、壊れたら女の子に修理してもらう、など、「ダメ」なロボット=アンドロイドでした。『REBOOT』でもそこはある程度、踏襲されているものの、光明寺博士(まさかの長嶋一茂)、娘と息子を危険から遠ざけるためにと、「光明寺ファイル」をマイクロSDカードに保存して、こっそり息子の体内に埋め込むのはどうかと思う。そりゃあ敵対勢力は息子を追いかけますって。危険から遠ざけるどころか火中に放り込んでどうする。基本設定の“ダメさ加減”はいただけません。

 もっとも、そうしないとジロー/キカイダーの任務が不要になってしまうわけですが。けれど、日本経済再生をロボット産業にかけよう→実は軍事転用も視野に収めていました、という(よくある)現代劇にアレンジするのであれば、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のように大胆に翻案しても良かったのではないかと思います。「良心回路」の設定とテーマさえ外さなければ。

あ、くどいくらいのキカイダーとハカイダーの殴り合いは嫌いではありません。拳で語り合う的な意味で人間臭くて。最後はアレを使いますが。



#映画レビュー
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by non-grata | 2014-05-27 15:43 | 映画

(B26-27)安定のトラブル・シューティング|『私と月につきあって』『魔法使いとランデヴー』感想

 思ったより早く米AmazonからDVDが届きました。送料込みで5,000円くらいか。リージョン・コードは違いますが、パソコンなり、ファームウェアいじったパイオニアのDVDプレイヤーなりで再生できるので、特典不要なら北米版のほうが断然お得ですね。

 クレジットは2008年で、アニメ化されたのは小説が出版された10年後くらいか。今の目で見ると、作画が微妙に残念だったり、CGIの解像度(ディテール)が不足しているなど、なかなか微笑ましく感じられますが、毎週放映されていたら楽しみに見るレベルじゃないでしょうか。まだ2話までしか見ていませんが。

d0252390_141029100.jpg 第3巻ではフランス主導ながら、ついに月まで行ってしまいます。第4巻は短編集で、最後ははやぶさ(作中では「はちどり」)が登場します。ミッション→訓練→ミッション中のトラブル→クリア→やれやれ→びっくりするようなトラブル→びっくりするような方法でクリア、という、安心のロケットガール展開。

 クレメンタインの調査では、月面高緯度地方に永久氷河があるという可能性が示唆され(1994年)、本作が書かれた時点では(1999年)そんな夢があったわけですが、かぐやなどの調査でその可能性は否定されております(あとがきより)。となると、作中に登場する驚きのトラブル・シューティングは実現不能になってしまいますが、月面基地ができるようなら応用できそうなアイディアです。

 第4巻に収められている短中編はどれも軽妙洒脱で面白い。はちどり回収話にはスペーステザーが登場するものの、あまりにスケールが大きすぎて頭の中でうまくビジュアル化できなかったので、テザー推進理論の解説込みで映像化して欲しい。今ならフルCGアニメで全編リメイクとかどうですかね?

 作中の科学考証が適切かどうかわからないレベルの読書人なので、宇宙開発の物語は科学的でもあり呪術的でもあります。その両方が一緒くたになった『ロケットガール』を読んでいると、途中、リアルなんだかうまく騙されているのか不思議な気持ちにさせられますが、読後は幸せな気分になって、「最後は精霊が何とかしてくれるから」と、現実の宇宙開発も全面的に応援したくなります。



#書評
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by non-grata | 2014-05-22 14:43 | 読書

(B24-25)『リビジョン』『リアクト』感想

d0252390_10431235.jpg 何なんでしょうかこの、『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語』を観た後のような印象は。『リビジョン』の面白さが『リライト』頼みになっていて、『リアクト』がさらに『リビジョン』頼みになっているのが、どうにも残念。

 シリーズもの、続きものはそういうもんよ、という割り切りができればいいのですが、それができないくらい前作が好きすぎる、ということもありまして。前作ありきな続編を見せられると、前作も「実は続編ありきでしてね。実はこの設定は後でこう生きてくるんですわ」と後出しで教えられて、何とももにょっとした気持ちになるわけです。法条遥が最初から壮大な構想を持って『リライト』を書いたのかどうかは知りませんが。

 続編は、前編の後日談という時間の流れになるのが一般的ですが、タイムリープものは後編であっても前編の過去に遡れてしまう。そこで話を変えられたり、あるいは前編をライブで見て素直に感動したエピソードの裏には実は……という後づけの種明かしがされると、普通にクソみたいな続編を見せられるよりもダメージが大きくなるわけです。

 タイムリープ(ループ)ものの続編でうまくいった例では、『劇場版『STEINS;GATE』があげられるでしょうか。後日談としても機能しており、前編で説明不足だったところを補ってもいて。その他の派生作品は知らないですが。

 『リビジョン』『リアクト』に関しては、テーマを本質的に理解できていないところもあります。法条遥のファンが社内にいたように思うので、そのうち解説を請おう。




#書評
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by non-grata | 2014-05-21 11:06 | 読書

(M13)専業主婦には(多分)きっつい映画|『ブルージャスミン』

 自宅から一番近い映画館はMOVIX堺、無難なシネコンなんですが、ウディ・アレンの新作『ブルージャスミン』上映していて驚きました。スタッフにファンがいるのか。上映2週目、土曜日正午からの回というコンディションでしたが、観客は堂々の2名。おっさん&おっさんですよ。

d0252390_14121647.jpg 以前観た『ミッドナイト・イン・パリ』のような軽妙さはなく、シリアスな展開です。投資家の夫を失い一文無しとなった姉(ケイト・プランシェット)は、サン・フランシスコに住むシングル・マザーの妹(サリー・ホーキンス)の許へ転がり込む。都落ちしたセレブと典型的なブルー・カラーの二人がしっくりくるはずもなく、しかし姉は妹に頼らなければ住むところに困るという現実があり、妹も姉の成功体験が自分にも訪れるのではないかという期待がある。

 登場人物の信条は「他力本願と責任転嫁」のようで、およそヒーロー、ヒロインからは縁遠いのですが、リアリティがあり、嫌でも誰かと感情移入してしまいます。例えば、「この資格を取れば良い仕事に就けて生活も安定する」(他力本願)とか、「この男と一緒になれば楽に暮らしていける」(これも他力本願)とか、「今がクソみたいな生活なのはあいつの口車に乗ったせい」(責任転嫁)とか、身につまされるようなエピソードが盛り込まれています。

 他力本願と責任転嫁の行き着く先はブランド信仰で、誰かが良いと評価してくれるものを盲信して良いものだと勘違いしたり、勝手に裏切られたりするわけです。ホワイト・カラーもブルー・カラーも、男たちが皆、女をモノ扱いするブランド信仰者として描かれているのが実に辛辣。

 あ、一人だけ例外がいました。彼だけは自分の価値観を持って生きており、「姉」は最後に自分にそれが欠けていたことを知って慟哭してしまったのではないでしょうか。




#レビュー
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by non-grata | 2014-05-20 15:11 | 映画

(B23)救援ミッションは熱い|『天使は結果オーライ』感想

アニメ『ロケット・ガール』のレビューを見ていると賛否両論あって、どちらかと言えば否定派が多い、と言うよりは否定派の声が大きくて、なかなか興味深いものがあります。人命軽視に受け取られる演出が多く不愉快極まりない、的な意見が目立ちますが、これは見てみないとわかりません。

ただ、こうした倫理観は描かれた時代の影響を大きく受けるもので、2003年のコロンビア号事故を分水嶺として、描かれ方、受け止め方が変化すると思われます。発射時に耐熱システムが損傷したことがわかりつつ、NASAが適切な対応を取らなかったことが悲惨な結果につながったことが明らかな今なら(もちろん、何もできなかった可能性もあるわけですが)、作中で管制側に安全や人命を無視するような発言や行動はさせにくいでしょう。2003年の事件を知る者が、それ以前につくられた無邪気な宇宙開発物語を読むなり見るなりすると、なるほど腹立たしく感じることもわからないでもない。

まあ倫理観云々を言い始めると、年端もいかない少年少女に世界の運命を託すのが日本のアニメや漫画やラノベのお家芸なので、今さらということになってしまいます。

そんなことより米AmazonからDVDの到着はまだか!!

d0252390_12144340.jpg1巻はたいがい破天荒でしたが、2巻はそれに輪をかけた話です。

大気圏突入でトラブル→軌道がそれて元母校の近くに不時着→生物部の才女をスカウト→MS(ミッション・スペシャリスト)誕生→宇宙飛行訓練→初飛行でスペースシャトルとランデブー&オルフェウス(冥王星探査機)の修理……と、またも短期間のうちに話はめまぐるしく展開します。

ジャパニメーション好きのスペースシャトル搭乗員がスキンタイト宇宙服のJKを見て「エヴァみたい」とつぶやくシーンがありまして、作中の相方同様、エヴァ・ガードナーのことかと思いきや、プラグスーツを着た『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波なりアスカなりのことでしたか。本作が書かれたのはそういう時代でした。

前作同様に最後まで面白くは読めたものの、裏表紙のあらすじに書かれている「難関」が伏線となって最後の障害回避になるかと思えばその逆で、何故めでたしめでたしになったのか、ファンといえどなかなか擁護ができない結末であります。毎度人智を超えた力が働くのはよろしいとしても、精霊頼みすぎるのもいかがなものですかね。まさに「結果オーライ」!

いよいよ次の3巻で完結。何だかんだで「小さくて軽いのは正義」(解説より)の物語とお別れするのは残念ですが、その前に『リライト』から数カ月後の物語となる『リビジョン』を読むのだ。




#書評
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by non-grata | 2014-05-16 13:49 | 読書

(B22)野球監督に求められるのは作戦術|『そら、そうよ ~勝つ理由、負ける理由 』感想

昨日の試合でもバットに当たる気せーへん、というレベルでエルドレッドの急速冷凍が気になりますが、ここらで休養&ロサリオ一軍再昇格とかどうなんですかね。キラは昨夜の場外ホームランで眠りから覚めたと思いたい。

d0252390_15224112.jpg「どんでん」こと岡田彰布の監督論。書店で少し立ち読みしたら意外に面白かったので購入決定。割とぶっちゃけた内容になっていて、例えば144試合のペナント・レースのうち、監督の技量で勝利できるのは3〜4試合、よくて5試合とのこと。じゃあ監督はどこでチームを勝利に導くねん、と言えば、シーズンが始まるまでにその仕事は終わっている、というわけです。そのチームに欠けているものが何かを分析し、プレシーズンでそこを補って勝利するための方程式を用意するんですな。

実例として自らの「JFK」をあげ、抑えがしっかりしているから、7回の時点で1-2点リードしているから勝てる。そこから逆算したチームづくりを行った、と述懐しています。また自分がDeNAの監督に就任したら、チーム防御率4.50に対して1試合当たりの得点は4.38なので、どうすれば5点取れるのかを考える、その方法を導き出せる引き出しの多さが監督の手腕であると書いてあります。なるほど。チーム防御率を4.00にしたほうが楽そうなんですが、そういうものでもないんですね。

その、減点主義でなく加点主義なところは野村監督(ノムケンでなくノムさんのほう)に通じるものがありますが、ノムさんが一軍監督、岡田が二軍監督時代のちょっとした摩擦についても暴露しております。面白い。星野監督についても、コーチ、選手を大量に入れ替えるのはいいけれど、それは劇薬に過ぎない=短期政権しか担えないとちくり。中途半端な選手の中途半端なトレードは中途半端な結果にしかならない、じゃあ誰が何のためにするのかと言えば、フロントが仕事してまっせ、というポーズのためにやるのだとか、言いたい放題であります。

傍目にもひどいと思わせる解任劇があったので、どうしてもオリックスについては辛辣な物言いになっております。しゃーない。

監督は中〜長期のビジョンでチームづくりをしなければならず、そのためのドラフト、トレードをしなければならない、という話に説得力があります。実際、岡田時代の阪神のドラフトはうまくいっているようで、鳥谷や上本など、岡田のセレクトは間違っていなかったんや! と思わせます。そのチームづくりが球団の「伝統」になれば、自然と勝てるチームになっていく、というわけです。この点について著者は、巨人、阪神に黄色信号が点いたと警告。

シーズンに入るまでのチームづくりは作戦。試合における采配は戦術ということになるでしょうか。作戦術が下士官に浸透していれば、それは勝ち方を知っているという意味であり、第二次大戦前半のドイツ軍のように強い組織になるわけです。フロントの仕事はロジスティクスに当たりますか。「二軍戦でT-岡田がバックスクリーンにホームランを打ったから一軍で使え」というオリックスのフロントは、「新型戦車が完成するまでツィタデレ作戦延期な」というヒトラーみたいなもんでしょうか(※諸説あり)。現場のことは現場に任せんと(アカン)。

野球に詳しい人なら「常識」と思われることが多いかもしれませんが、読めばシーズン通してのプロ野球観戦が面白くなるに違いない一冊です。




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by non-grata | 2014-05-15 15:47 | 読書

(B21)『女子高生、リフトオフ』感想

日経新聞を読んでいたら今年は宇宙旅行元年だそうで、何でも2014年後半には民間宇宙旅行が始まる予定です(2500万円だかで一瞬の無重力状態と「宇宙から見た地球」を楽しめる)。個人的にも、ごくごく近いところで宇宙葬の話が持ち上がっておりまして、もっともバルーン散骨などではなく、ロケットで飛ばすタイプの本格的なもの。そういうことも影響してか、書店で「宇宙」がつく本を見つけると、とりあえず食指が動いてしまいます。

そんなわけで、昔から気になってはいたけれど、何となく手を出しづらかった『ロケットガール』が、ハヤカワ文庫から再版されたこともあって、買って一気読みしました。いやあ面白かった。

d0252390_1541086.jpgただし、ストーリーは破天荒。行方不明になった父親を捜しに女子高生が単身、ソロモン諸島へやって来て、宇宙飛行士にスカウトされる!! しかも4カ月の訓練で有人飛行に挑戦してしまうというんですから!!

その根拠としては、「船長」が小柄なら宇宙船の小型化・軽量化ができる。体重が1kg軽くなれば、それを打ち上げるロケットは70kgもダウンサイズできるということです。体重70kgのおっさんの代わりに35kgの女子高生(そりゃ軽すぎだけど)を打ち上げるなら、2.5トンも節約できることになります。なるほど!

本作はジャンルとしてはライトノベルに属するからか、紋切り型の登場人物や台詞が多いこともあってすらすら読めるし、展開も派手で面白いのですが、美点は何と言っても25年前に書かれた近未来の宇宙開発が的外れでなかったということでしょう。著者の「解説」の受け売りになりますが、カプセル型宇宙船やハイブリッド・エンジンはリアルであり、本作も他の野尻SF作品同様に楽しめます。スキンタイト宇宙服もMITで開発中なのです!

様子見で1巻だけ買いましたが、これは続きも気になると、残る2巻も購入。ついでにAmazon.comでDVDボックスもオーダーしてしまいました。

「女子高生がwwwwwwたった4カ月の訓練でwwwwww宇宙飛行士とかwwwwwwテラワロス」的なコメントと最低の評価もついていましたが、日本の女子高生にできないことはないということを、彼は多分知らないのでしょう。もっともその神通力も、最近は効かなくなったように感じますが。本作が書かれた頃は無敵でしたな。



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by non-grata | 2014-05-13 15:31 | 読書

(B20)おっさんによるおっさんのためのコラム|『どちらとも言えません』感想

野球界の三大誤認識。

(1)カープが調子良いのは鯉のぼりの季節まで。よく言われるんですが嘘ですよね。こちらにデータが。過去10年間で勝ち越しがあったのは2年だけ、昨年も堂々の5位。10年間通算でも負け越し17ですぜ。ここのところスタート・ダッシュに成功した試しなし、が本当。今年は良い意味で認識を覆してくれそうです。

(2)阪神の死のロード。甲子園が駄目でも大阪ドームがあるじゃん。いやそれよりもホークスとかカープの移動距離が大変なことに。この9連戦も、移動日なしで広島〜東京〜広島ですもんね。

三つ目は何だ?

d0252390_10431696.jpg主に『Number』に掲載されているコラムをまとめた一冊で、そう言えば久しく『Number』読んでないなあ。「スポーツ大好き作家が勝手気ままに論じます」と紹介文にある通りの内容です。おっさんなので野球の話題が中心。サッカーも取り上げられていますが、おっさん目線なので安心して読めます。

「WBCでわかってしまったアメリカ式の行く末?」 うーむ、WBCで勝っただけでここまで話を大きくしちゃっていいんですかね。「アメリカ式」って、チャーチルが言うところの民主主義と同じ、「民主主義は最悪の政治形態らしい。ただし、これまでに試されたすべての形態を別にすればの話であるが」ではないですかね。

「広島新球場と日本人の芝生コンプレックス。」 知らなかったのですが、昔の日本の芝は冬になると枯れてしまったのですね。そこで人工芝。出た当時は見た目がきれいだったので、市民球場の芝生と比べて羨ましく思えたものですが、「コンクリートの上でプレイするみたいなもの」という選手の感想を聞いて以来、どんなにハゲハゲでも天然芝の市民球場を誇らしく感じたのでした。しかし人工芝の神宮球場でサッカーの試合をやろうとか(1989年)、正気の沙汰ではありません。

「スポーツチームはオーナーの道楽である。」 海外ではオーナーは王様、選手は傭兵、GMはバイヤーというたとえ。王様なのだからアクが強いのは当然。プロ野球で言えば、ナベツネくらいしかおりませんな、絶対権力者は。

「今こそ振り返る十二年前の恥ずかしい過去。」 サッカーのワールドカップ初出場を決めた日本ですが、メディアがサッカーを論じるスキルを持っていなかったため、とりあえずゴールを決めた岡野をもてはやしてしまった、という話。ワールドカップ・フィーバーでおかしくなった人々をばっさり斬っています。

スポーツは観る者に感動を与えてくれる、といった言い回しもありますが、それよりはトップ・アスリートは語られてこそ価値がある、ネタを提供してくれてナンボ、という著者の意見に大いに同意します。



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by non-grata | 2014-05-09 11:32 | 読書

(B19)清水俊二派です|『ロング・グッドバイ〔東京篇〕』感想

どれほど懐が寂しくとも、NHKの集金人を追い返せないほど我が家のNHK視聴率は高い。あとはテレビ大阪。もっとも、口座からの自動引き落としによって「似非国営放送」に搾取されるがままなのですが。

だからと言うわけではないが、NHKのドラマ、結構見ています。民放には真似できないほど資金が潤沢なんだから、そりゃあ良いドラマをつくれるわな……少なくとも今の民放が、レイモンド・チャンドラー原作の『ロング・グッドバイ』を下敷きに、日本を舞台にしたハードボイルド・ドラマはつくれない。いや本当、原作知らない人は置いてけぼりの展開で驚きました。

その脚本(渡辺あや)を司城志朗がノベライズした『ロング・グッドバイ〔東京篇〕』です。

d0252390_1612245.jpg司城志朗と言えば、矢作俊彦と合作で『犬なら普通のこと』を発表しており、その筋には定評があります。いやもう本作も素晴らしかった。

例えば猫、キャットフード、鰹節の件。ドラマでは少なくとも第3回までは描かれなかったシーンですが──卵を温める猫はいましたが──これはロバート・アルトマンの映画『ロング・グッドバイ』へのオマージュ。こちらは「70年代のフィリップ・マーロウ」で原作とは別人ですが、猫が登場する〔東京篇〕も同じく「戦後東京のフィリップ・マーロウ」で別人なんですね。ただしアルトマンに比べて〔東京篇〕のストーリーは原作に忠実です。

同じ原作でも、日本では二つの顔を持つ、一つが清水俊二訳で、もう一つが村上春樹訳。原文に忠実なのは後者だが、原作の魅力を伝えてくれるのは、私にとっては前者。年齢とともに記憶力が低下したことを差し引いても、後者の台詞は覚えていないが、前者のなら空で言えます。〔東京篇〕は、清水俊二が描いたマーロウが、日本人のなりをして、日本語を話しています。そしていくつか、自分も使ってみたいと思える台詞を吐く。

ときどきひとは、私のことをお節介なやつだ、と言う。そうかも知れない。自分の歩く道もわからないくせに、ときどきひとに道を教えたがる。

不幸は群れをなしてやってくる、とシェイクスピアは書いた。幸もまた、とつけ加えるのを忘れたに違いない。

男の愚痴は、女の涙より始末が悪い。

(ロールスロイスに)乗っておいてよかった。二回目はぜんぜんちがう。女と同じだ、と思い、下品なことを、と珍しく自分を恥じた。

本作を読む予定があるなら、次に引用する台詞はその時まで取っておくべきです。もっとも、原作未読であれば大事にしておく意味は半減しますが。

中国人は世界中どこにでもいて、ときどきめちゃくちゃなことを言い出すが、作る詩はいつも美しい。

その詩があの名台詞に通じることは、言うまでもありません。

さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。



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by non-grata | 2014-05-08 16:51 | 読書

(M12)豆大/吾平世代でも楽しめます|『たまこラブストーリー』感想

ここのところ観たいと思える作品がなかったわけですが、昨日、アリオ八尾に富永TOMMY弘明と橋本仁が来て、『ジョジョの奇妙な冒険』第一部、第三部のOPテーマを披露するというじゃありませんか! それならばと、MOVIX八尾で何か観たついでに生歌も聴こうと、順番が逆なような気もしますが映画を観に行った次第です。それが『たまこラブストーリー』。

d0252390_13265728.jpgテレビ・シリーズ後の話ではありますが、独立した作品として鑑賞しても楽しめるラブコメに仕上がっています。本編を最後まで見たにもかかわらず、殆ど忘れてしまっていたおっさんが楽しめたんだから間違いない。

例えば現在放送中の『ニセコイ』が童貞の妄想を具現化したような突拍子のない話だったり、上映前に予告編が流れていた『好きっていいなよ。』が処女スイーツ(笑)に喜ばれそうな設定だったり、ラブコメは非現実的、あるいは非日常的なものが多いようです。なお、おっさんにとってはそれらも大好物で、『ニセコイ』は欠かさず見てますし、『好きって〜』は観ないと思うけれど『カノジョは嘘を愛しすぎてる』は観ました。面白かった。

それもそのはず、映画に出演しているのは美男美女、それらに感情移入して物語に没入するなら、身近に感じられる日常的な話よりも、現実ではなかなかお目にかかれないファンタジーのほうが面白いはず。なのですが、『たまこラブストーリー』を観ると、日常の中にも美しく素晴らしいものやことがいくらでも存在することに気づかされます。

ストーリーは実にシンプル。高校を卒業したら東京の大学へ進み、映像の勉強をしたいと考えるもち蔵が、自分の進路のことと、想いを、幼馴染みであるたまこに告げるというだけ。部活、進路、卒業、友情、恋愛と、誰もが思春期に直面する悩みとそのブレイクスルーが丁寧に描かれているので最後まで楽しめます。自分の年齢を考えると、どうしても親が子を見守るような視線になってしまうのですが。お父さん(豆大)とかお父さん(吾平)に感情移入してしまいます。

そういう世代が観ても面白いと思えるのは、彼らにもたまこ/もち蔵のような時期があったということを、きちんと描いてくれているから。娘/息子たちが親のことを想って、親たちもまた娘/息子のことを想う件に泣かされます。

アニメーションの良いところはカリカチュアによる演出が可能なところで、例えばもち蔵に告白された後、うさぎ山商店街の面々にもロマンスがある/あったことをたまこが知るシーン。これは実写だと、豆大とひなこのエピソードもあるのでくどくなりそうですが、本作では良い感じでスパイスになっています。また女の子たちの多少誇張された振る舞いが可愛らしさを生み、男の子たちの場合は憎めない馬鹿っぽさを際立たせているのは、京アニの面目躍如といったところでしょうか。自分が知らないだけかもしれませんが、これは京アニ以外の作品では感じたことはありません。

みどりちゃんがたまこに抱く複雑な感情とその変化もきれいに描かれています。一緒に映画を観た家人に言わせると、「思春期の女の子特有の、友情と愛情の狭間で揺れる独占欲的なもの」だそうで、実写でリアルにやるとどぎつくなりそうですが(男の子との取り合いにならなければ『櫻の園』のようにきれいにまとめられるか)、「絵」のおかげか適度に抑制された演出となり、しかし全編ほわわんとした話の中で、良いアクセントになっていました。

みどりちゃんの場合は多少、想いが行き過ぎなところがありましたが、『たまこマーケット』はいつだって誰かが誰かを想っているという当たり前だけれど大事なことを教えてくれる作品でした(よな)。そして本作『たまこラブストーリー』では、佐野元春の歌じゃないですが、「いつかは愛の謎が解けて/一人きりじゃいられなくなる」話なのでした。

豆大/吾平世代なのでそれまでは生温かく見守っていたはずなのが、ラストシーンで、たまこ/もち蔵と同じ視線に引っ張られます。ずるい、と思いつつも感涙せずにはいられません。



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by non-grata | 2014-05-07 14:52 | 映画

今年は何でも五つ星
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