おっさんノングラータ

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(B09)選んだのは私たち|『帰ってきたヒトラー』感想(★★★★★)

d0252390_15403842.jpg「面白い」とは聞いていたものの、これほどとは。

1945年、ソ連軍がベルリンに侵攻する最中、総統地下壕で拳銃自殺したアドルフ・ヒトラーが何故か2011年8月に復活する。その間の記憶はなし。ズドン、目が覚めたら現代の公園に転がっていたという次第。しかも服が何だかガソリン臭い(自殺後、遺体は既に貴重品となっていたガソリンをかけて燃やされたのです)。キオスクの店主に助けられ、テレビ番組のディレクターに見初められてコメディアンとしてテレビ出演。そしてあれよあれよと、まさに「電撃的」に人々の耳目を集めるようになる。

星一つ:シミュレーション小説として。アドルフ・ヒトラーが現代に甦り、今のドイツを見たらどう感じるか。政策をどう評価するか。政治家をどう思うか。ヒトラーは自分の番組で言いたい放題を言いますが、その言葉にどこか共感するものを感じます。上巻までは抱腹絶倒、ところが下巻までくると、「いや確かに言っていることは正しい(こともある)けれど、このままヒトラーに傾倒してエエんかいな」と不安になってくること請け合いです。原発の即時廃止、再生可能エネルギー支持の緑の党と意気投合するところなんか、笑っていいんだか何だかです。けれど、100年先200年先のドイツの在り方を考えているのは、ヒトラーくらいしかいないのも事実(何せ千年帝国を築こうとしたわけだし)。

星一つ:訳文の素晴らしさに。もちろん原文もすごいのだろうけれど、「ヒトラーなら言う言う」という口調がお見事。映画化されるそうですが、是非字幕も訳者である森内薫氏にお願いしたいものです。生憎ドイツ語は全くわかりませんが、文章を読みつつ、脳内では有名なヒトラーの演説(っぽいニセドイツ語)が流れていました。

星一つ:これは想像に頼るしかないのですが、第二次大戦中にドイツがやった悪いことは全部ヒトラーとナチスのせいにしたという負い目が、戦後ドイツにあるんじゃないでしょうか。実際のところ、ヒトラーが選挙で選ばれたにもかかわらず。「国家社会主義とは畢竟、明るい、人生を肯定するような運動なのだから」という言葉に賛同した人もいるでしょう。「不当に私腹を肥やしたことも、自身の利益だけのために何かをしたことも」ない党首を信用した人もいるでしょう。それがニュルンベルク裁判の結果、悪いのはヒトラーとナチス、ドイツ国民もある種の被害者、という線引きがなされた。線引きがなされたからこそ、戦後の政策が明確で健全な(少なくとも隣国と平和な関係を築いているように見える)ものになったのでしょう。が、その負い目を知らないYouTube世代は、ヒトラーが出演するテレビ番組の動画を見て無邪気に信奉したりできるのです。となるとやはり、ヒトラーの主張には何某かの真理が含まれていないかと、大いに考えさせられます。

星一つ:その思いを補強してくれるのが、ドイツ現政権(メルケル政権)への批判。生憎ドイツの政治情勢にも明るくないが、日本同様様々な問題を抱えているのでしょう。ヒトラーによる次のような政治家批判は万国共通のはずです。
「たとえばリベラル派に属する例のアジア顔の──ヴェトナム出身だという──大臣だ。医者を志しながらその修業を中断して政界に入り、政治家としてのキャリアに心血を注ぎはじめたこの若造は、いったいなぜそんなことをしたのか? まず医師の修業をし、医師として十年か二十年、週に五十時間か六十時間も働いて厳しい現実を目の当たりにして、そうして自分なりの世界観を築いてからなら、良心の声に従って意義深い政治の仕事を始めることもできるだろう」

これに対してヒトラーは、入院した病院で医者にインタビューを行い、ドイツの医療が直面している危機的状況に胸を痛め、解決策を探さなければいけないと考えます。実に真摯なのです。

星一つ:というように、アドルフ・ヒトラーは実に興味深い人物として描かれています。もっと言えば、好ましい人物なのです。ドイツは第一次世界大戦に敗れて国内はがたがた、戦後処理で領土を奪われ莫大な賠償金まで請求されました。ドイツ人が誇りを失いかけていたところ、ヒトラーは夢を見させてくれました。そりゃあ「国家社会主義ドイツ労働者党」は政権取るわー。

チャーチルが言うように、民主主義というのは最悪ですが、これまで行われてきた政治形態に比べればましです。となると、政治家を選ぶのは選挙しかないわけで、選挙民の義務としては、選んだ後も厳しく監視するしかないということでしょうか。



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by non-grata | 2014-02-28 16:25 | 読書

『KANO』に行けない件

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この映画なんですけどね。
地下鉄の吊り広告で第9回大阪アジアン映画祭があるのを知って、オープニング作品が『KANO』なんですよ。無名の弱小高校「嘉義農林高校(嘉農)」が日本人の熱血監督(永瀬正敏)指導の下、甲子園に出場するという実話をベースにした作品で、野球が好きで映画が好き、台湾(と台湾映画)も好きなら観るしかないやろ。

なんですが、チケットは既に完売なんですね。どちらにしても7日は出張で行けなかったわけですが。

台湾でき昨日から公開されていて、映画好きの台湾人の仕事仲間から、「『KANO』良かったわー、美しい話やったわー。あんたの好きそうな話やから、観に行かなあかんで(意訳)」というメールをいただきました。そんなこと言われましても。

その人のおじいさんが1911年生まれ、嘉農の主人公も1910年生まれ。そしてそのおじいさん、嘉農で野球をやっていたんだそうです。そりゃ公開日に映画館にダッシュするわけだ。

うーむ、シネマート心斎橋あたりで上映してくれないものか。



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by non-grata | 2014-02-28 11:14 | 映画

(M07)『劇場版 モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵』感想(★★★★★)

d0252390_10305988.jpg2012年に放映された『モーレツ宇宙海賊』の最終回で映画化が発表されたわけですが、それから2年後の今年、ようやく実現しました。パチンコ・マネー恐るべし。

評判の良い原作は未読、テレビ放映も何となく見ていただけというぐうたらが劇場へ足を運ぶ気になったのは、ファミリーマート限定の前売券付きの痛・弁天丸を買ってしまったため。ハセガワ製のこのキット、そのうち買おうと思っていたのですが、これまで機会に恵まれなかったのです。

映画はテレビで放映されたストーリーの続きですが、未見の人でも、あるいは話を覚えていない人でも、冒頭で女子高生の日常から宇宙海賊稼業への流れがももクロの『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』とともに描かれ、観客を一気に「どこかの宇宙」へ連れて行ってくれます。やっぱももクロはエエわー、で星一つ

意識が海明星に到着したら、あとはただただスペース・オペラに身を委ねるのが本作の楽しみ方(だよね)。無限親子の父子の葛藤に共感するもよし、ヨット部メンバーの協力態勢に胸熱するもよし、梨理香vsスカーレットのキャット・ファイトを楽しむもよし(短いけど)。茉莉香の新コスチュームに萌えるもよし。星一つ。もちろんチアキ"ちゃん"も元気です。星一つ

スペオペと言っても、ヒーローがお姫様を助けるのではなく、ヒロインが少年をフィジカルでもメンタルでも救う話で、「自分の道は自分で拓け」がテーマ。70〜80年代は無軌道に突っ走る子どもと、それを陰で支える大人、という構図で(『宇宙戦艦ヤマト』の古代&沖田がその典型)、90年代に入ると、子どもも大人も役割がはっきりしない混迷の時代に突入して(『新世紀エヴァンゲリオン』の碇父子)、今は迷える子どもを同世代の成功者が背中を押すようになったということでしょうか。その茉莉香も梨理香に放任されてきたから、結局は環境に甘えることなく自分で物事を決めなはれ、ということなんですかね。それはどの時代にも通じる真理ですが、ことさら強調せねばならないというのが今の時代性ということなんでしょう。

で、新しい道が拓ければ違った風景を見られるわけで、どれだけの風景を見られるかで人間の成長は決まります。無限彼方君にとって、そうさせてくれたのが茉莉香であって、そのための道具がダイバー・スーツ(?)で、亜空間のXポイントを見て人生が変わりました。

話は唐突に『ノラガミ』になりますが、夜トがいじめられっ子にアドバイスします。仲間の数を気にするんじゃなく、一人でいいから信頼できる相棒を持て、と(チャンドラーの小説にも似たような台詞がありました)。その一人っていうのは、違う風景を見せてくれる人であるべきでしょう。もちろん自分もその人にとってそうあらねばなりませんが。

『モーレツ宇宙海賊』が痛快なのは、主人公たる茉莉香が劇中の登場人物たちにとっても、また観客にとっても常に違う風景を見せてくれる存在であるからで、それこそまさにスペース・オペラの精神というやつではないでしょうか!星二つ



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by non-grata | 2014-02-26 11:33 | 映画

(B08)我々は戦争経済を知らない|『「レアメタル」の太平洋戦争』感想(★★★★★)

d0252390_88553.jpgレアメタル──希少金属の争奪が数年前に話題になりましたが、いやいやそんなもん70年以上前から問題でっせ、ということを教えられました。

戦争は資源の獲得が焦点であり、八紘一宇の大義名分を掲げた太平洋戦争も所詮は南方資源欲しさに始めた戦いであり、開戦理由を聞かされた東条英機をして「結局、このワシに物盗りをやれというのか」と憮然とした表情を浮かべたと伝えられています。

で、「南方資源」と言われて真っ先に思い浮かぶのがインドネシアの石油ですが、戦争遂行には鉄や銅といったベースメタルはもちろん、タングステンやマンガン、ニッケル、クロムといったレアメタルも欠かせません。本書では銅をタンパク質、鋼を骨格、レアメタルをビタミンに例えてきっちり解説してくれます。そして副題「なぜ日本は金属を戦力化できなかったのか」にある通り、日本の産業構造、総力戦体制の脆弱さ、無策さを追究しています。星一つ

知っているつもりで知らないことが多くて、非常にためになります。例えば、

●超16インチ砲艦でアメリカに勝負を挑むという考え方そのものはあながち間違いとは言えない。少なくとも43年までは、アメリカも大艦巨砲主義に拘泥していたし、戦艦の建造には長い歳月を要する。2年ほどのリード・タイムをアドバンテージに転化できるという発想そのものは健全である。もちろん航空優位が現実だったわけで、大艦巨砲主義そのものは過ちですが、物量戦になるとアメリカには勝てない=航空消耗戦では勝てない=航空優位論を唱えるなら戦争しちゃいかんでしょ、となります。大型戦艦の建造そのものにも膨大な鋼材が必要ですが、それを建造するための設備にもまた、膨大な鋼材が欠かせないというのも盲点でした。

●航空機を増産するのにアルミニウムを確保するだけではままならない。生産設備に工作機械、爆弾、魚雷、機銃弾の増産、搭乗員の練成も必要になる。そりゃあ当たり前ですよね。重金属から軽金属への産業シフトは大変で、ドイツでは飛行機の代わりに対空砲を増産しようとして苦労したということでした。

●太平洋戦争で、日本は緒戦で計画通り資源地帯を占領したが、思惑通り資源を確保することはできなかった。
フィリピン:マンガン産出量26,000トン/年だったのが、占領後200トン/年に。クロムは148,000トン/年が10,000トン/年に。
マレーシア:鉄鉱石100万トン/年だったのが、占領後は数万トン/年に。
インドネシア:錫54,000トン/年だったのが、占領後は5分の1に。
これだけ激減した理由は連合軍が撤退時に施設を破壊したからでも抗日ゲリラの妨害に遭ったからでもなく、単に運営能力の欠如によるものと、著者は指摘しています。熟練労働者は戦地に駆り出されており、現場のことをわかっていない役人が送り込まれたところで、できることと言えば軍票を乱発して地域経済を混乱させることだけ。まともな生産活動ができるはずもありません。八紘一宇、五族協和の精神は何処へ? 現代にも通じる問題提起に星一つ

●無謀なFS作戦は、ニューカレドニアのニッケルが狙いだった。FS作戦に限らず、「漏れなくレアメタルがついてくる」と言っておけば無茶な作戦も通るところがすごい。ドイツも似たようなもので、東部戦線でヒトラーがニコポリの死守命令を出したのはマンガンが産出されるから。実際は備蓄分はルーマニア、ハンガリー分があるのでそんなことはなかったそうですが、ニコポリのマンガンを失えばドイツの軍需産業は3カ月で息の根が止まると言われていました。そうすると東部戦線末期、赤軍がベルリンに向かっているのにハンガリーに主力を送り込んだのも納得がいきます。レアメタルが軍事のモチベーションになっていると教えてくれたことに星一つ

戦争には戦略という目標があって、軍事的にそれを遂行するために作戦術が編み出されました。それが19世紀のことで、作戦を有利に遂行するために戦術が、戦術を発展させるために兵器が開発されていきました。そしてその兵器を進歩させ、安定供給するためにはシステム化された産業が必要です。原材料の獲得、それを生産地まで送り届ける手段の確保、生産設備の整備、前線への供給といった一連の流れがシステムとして確立できていなければなりません。そしてそのシステムが戦略目標と同じ方向を向いていなければならないことは言うまでもないでしょう。そうした発想が戦勝国にはあり、敗戦国にはなかったわけで、さて我が身を振り返った時に、果たしてその敗戦から学べているのか自信が持てなくなります。星二つ



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by non-grata | 2014-02-20 09:17 | 読書

(M06)社会派映画です|『地球防衛未亡人』感想(★★★★★)

d0252390_9465835.jpg言わずと知れた河崎実監督作品ですが、テレビCMもちょくちょく流れているようで、勘違いして劇場へ足を運んだ人が怒ってしまうタイプの作品です。『地球防衛少女イコちゃん』に始まり、『いかレスラー』『かにゴールキーパー』などでカルト的な人気を博した河崎監督作品はDVDで鑑賞していましたが、さすがに映画館で『ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発』を観た時は脱力しました。ギララで免疫がついていたはずなのに、『地球防衛未亡人』でまたも、大いに脱力してしまいました。すみません。

大阪での公開日、シネマート心斎橋へ行ってきました。初日は上映後に監督と堀内正美さん、ペルビー貴子さんの舞台挨拶があり、撮影自由、公開自由とのことなのでパチリ。満員で、前に座っていた人の頭に堀内さんが隠れてしまいましたが。
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以下、覚えている限り。ニュアンス間違っていたらすみません。
●社会派監督です!
●地球防衛「少女」を撮っている自分に、おおよそ30年後に地球防衛「未亡人」を撮っているよ、と言っても信じてくれないだろうなあ。
●3.11後は映画を撮る気にならなかったけれど、何かしなければならないという思いもあった。けれども、辛気臭いのは違うと思うし、笑いながらも考えさせられる作品にしたかった。
●もともとは『怪獣のうんこ』という仮題だった。壇蜜さんへのオファーは、電話で直接「『怪獣のうんこ』に出ませんか?」快諾してくれた壇蜜さんまじ天使。
●天使エピソードその1:『いかレスラー』のファン(?)。ストラップをコンプリートしていた模様。そのつながりで自室に『いかレスラー』のポスターが貼ってあったんですね。
●その2:メイキングDVDではすっぴんでの出演を快諾。普段はユニクロとかしまむらの服を着こなす(?)。そんなわけで、オフのシーンではダサダサの服装ですが、これが様になっているのです。
●多分、堀内さんの持ちネタその1:監督から「次の映画は壇蜜さんとの絡みです」と言われて、しまむら(ユニクロだったか)にブリーフを買い求めに行く。絡みって、そういうことじゃなくて、普通に共演するだけですから!
●その2:白衣は自前。当日の土曜ワイド劇場に、不倫する医師役で出演されたそうですが、この時に着ていた白衣も自前なんだそうです。
●オチは筒井康隆さんの小説から。「使っていいですか?」と監督が電話で尋ねたところ、二つ返事でOK。クレジットもギャラも不要でした。太っ腹。
●筒井康隆さんと言えば、『日本以外全部沈没』も河崎監督作品ですが、ペルビー貴子さんは元ネタの『日本沈没』を知らなかった!(昭和版はもちろん、平成版でさえも!)
●『地球防衛未亡人』の製作費は『パシフィック・リム』の3000分の1! JAP(本作における地球防衛軍の日本支局)の司令部なんて撮影スタジオだよ! たまたまなんですが、某地方アイドルのPV撮影でこのスタジオを使わせてもらいました。
●今は素人さんでも映画が撮れる。お前らどんどん映画撮ってYouTubeに投稿しやがれ! 良いネタがあれば、監督見習って直接オファーするんだ!
●映画製作は「映画ごっこ」の延長です。いい大人が真剣になってごっこ遊びをするからいいんだ。勝新太郎もそんなことを言っていた。

最後の言葉ですが、たまたま読み終えた『星になるには早すぎる』でも同じような台詞があり、通じるものがありました。以下、長いですが引用。

「安くないチケット代を払い、隣の客と肩を寄せ、楽しそうに試合を眺めている。野球選手は、お百姓や技術者のように物を生み出すことはできん。ワシらが与えられるものがあるとすれば、それは品物ではなく歓喜や興奮なんよ。空気を切り裂く豪速球に天高く舞い上がるホームラン。そういうものに希望を見出すからこそ、ファンはスタジアムに金を落としてくれるんや」

舞台挨拶は初めてでしたが、監督や出演者の生の声、映画に対する想いが伝わってきて非常に面白いものでした。星五つ



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by non-grata | 2014-02-18 10:26 | 映画

(B07)表紙詐欺|『星になるには早すぎる』感想(★★★★★)

d0252390_919841.jpgこれも日経新聞の書評で知った一冊ですが、書評を読んでいなかったら書店で手に取った可能性ゼロですわ。萌え系アニメ系を狙って外したようなイタい表紙に、それだけ取り出したら気恥ずかしいタイトル。(おっさんが)手に取るにはキツすぎる、てなもんです。

主人公は元女性刑事。自分のミスで婦女暴行犯を死なせてしまったことで警察を辞め、引きこもって酒浸りになっているところを、交渉(ネゴ)屋にスカウトされる。交渉屋の仕事は文字通り、あらゆる諍いを交渉によってまとめること。例えば……

「七つの子」。元教師だった母親が住む自宅を売却したがっている子どもたちからの依頼。母親は頑なに拒否するばかりか、最近はソフビの怪獣人形を買い漁るなど、もしかすると痴呆の症状が出ているのではないかと思われる言動も見られます。果たして彼女に自宅売却を納得させられるのか? 日常ミステリの要素もあり、隠された謎が明らかになるところで涙腺決壊必至。星一つ

「羽衣の下」。西宮歌劇(もちろん、宝塚歌劇が元ネタ)出身の女優にハリウッドの大物監督から映画出演のオファーが。しかしベッド・シーンが含まれていたため、女優はこれを拒む。彼女を「脱がせる」ため、交渉屋の登場です。着ているものだけではなく、心のカードも取り除くというベタな展開ですが、それがいいのです。星一つ

この女優がなかなか格好良いことを言っていまして、
「私たちに時間を巻き戻すすべはない。過去の失敗の責任なんて誰にも取れはしないの。せいぜいやれるのは、上から成功を覆いかぶせて傷跡を見えなくすることぐらい」
「この世で一番の罪は、無知でいること。愚かな人間は、いつか必ず他人を不幸にする」
などなど。三十路女同士のやり取りが微笑ましくて星一つ

「錆び鉄」。撮り鉄/乗り鉄とは関係なく、「錆びた鉄人」の意味か。在阪球団の四番打者がFAで横浜の球団へ移籍。単なる戦力アップだけではなく、チームの精神的支柱ともなり、移籍最初の年に弱小チームを優勝に導く……までは良かったのですが、その後は肉体の衰えを隠すことはできず、チームも連続でBクラス。その元凶こそ連続試合出場記録だけが取り柄となった彼であり、さらに高額の複数年契約のために球団の財政事情が逼迫、補強もままならない状態です。交渉屋に、契約内容を出来高制に変更する依頼が舞い込みます。3話の中で最もコミカルな内容ですが、主人公・薫の、交渉屋としての成長は見られないのに交渉を成功させる能力の成長が見られる話となっています。星一つ

続編に期待して星一つ

ところで、装画のクレジットは主人公である「一ノ木薫」と一字違いの「一ノ瀬かおる」なんですが、少女漫画家とイコールなんでしょうか。



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by non-grata | 2014-02-17 10:12 | 読書

『海のクレイドル』感想

d0252390_8191128.jpg『軍靴のバルツァー』最新刊を買ったら、大判の折り込みフライヤーがついていましてね。『海のクレイドル』の宣伝がされていたわけです。「産業革命」「海洋冒険」のキーワードに惹かれて買ってしまいました。

貧民街で暮らしていたモニカだが、心優しい主人にメイドとして雇われる。息子エヴァンを守って欲しい──そう頼まれたのだが、主人は船旅で行方不明。エヴァンは親族に引き取られ、モニカも解雇されて貧民街に逆戻り。しかしエヴァンの不遇を悟ったモニカは、主人との約束を守るため、大胆な行動を取る。エヴァンを救い出し、蒸気船に乗って主人を捜す旅に出るのだ。

というところが1巻の内容。密航同然というか、密航した2人(いや3人)が首尾良く機関士に採用され、これから高海に繰り出します。

実際の産業革命は貧富の格差を助長し、支配層と被支配層をきっちり分けてしまったわけですが、蒸気機関が万人に新たな力をもたらしてくれるという幻想もあるわけです(これは後知恵かもしれませんが)。新時代が到来する。蒸気機関がもたらすそんな幻想が、主人公の、そりゃ無茶やろうという行動を後押ししたのかもしれません。もちろん動機の根底には「主人との約束を守る」という純粋な想いがあるわけですが。

産業革命がもたらすことになる明暗と、大航海の先にある希望と絶望は、訳ありのベテラン機関士と新米機関士の存在によって暗示されております。そこに直情径行型のモニカが加わることで、物語が大きく動き出すのでしょう。

ダイナミックな構図と、微妙に描き慣れていない感(失礼)が味わい深い画になっております。これも続刊が待ち遠しい。



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by non-grata | 2014-02-14 09:03 | アニメ・漫画

(B06)ツンデレにもほどがある|『白の団と黒い王子』感想(★★★★★)

d0252390_8103447.jpg多い日でもアクセス数が3桁いかない泡沫ブログですが、それでも何らかの傾向が見て取れまして、最近はほぼ1年前の「『軍靴のバルツァー』感想」にアクセスが偏っています。何でや? と思っていたら、書店で最新第6巻を見つけて納得。それまでの話を忘れてしまうので、最新刊読むたびに既刊を読み返さないといけません。一気読みしたいタイプの作品ですよね。

それはさておき『白の団と黒い王子』。コナン・ドイルが19世紀に書いた騎士道物語で、舞台は百年戦争。Wikipediaによると、「ドイル自身は自らの歴史小説やSF物のほうに価値を感じ、シャーロック・ホームズシリーズを快くは思っていなかった。『白衣の騎士団』のような中世の騎士道を描きたかったといわれる」とありますが、いやいやこれ当時のラノベでしょ、という切り口で挑んだ訳書です。その大胆さに星一つ

修道院育ちで世間知らずのアレインが主人公。旅の途中で傭兵の仲間となり、トゥイナム城城代の騎士であるナイジェル卿の娘モードの危機を救ったことが縁でモードたちの家庭教師となり、卿の従騎士となって従軍、海戦に決闘、籠城戦を経験してスペインはピレネー侵攻に参加するという冒険譚。もちろん、モードとのロマンスあり。何というラノベ!星一つ

役者の後書きにもある通り、本作が翻訳されるのはこれが3回目で、最初は抄訳、2回目は原書房らしくクソ真面目な完訳で、今回は「超訳」。ダイジェストで書けばなるほど冒険譚ですが、そこは19世紀の小説、物語の進行はゆっくりとしており、目指しているところもなかなか明らかにはなりません。未読ですが、原書房の『白衣の騎士団』に挑戦していたら、途中で投げ出していたことでしょう。『白の団〜』は、訳者が適宜フォローしてくれている(と思う)ので、読みやすく、現代の読者でも置いてけぼりにされることはありません。星一つ。もちろん、百年戦争の概要を知っておくと、より深く楽しめるはずです。

原作から変えているのはエイルワードを男性から女性にしたことですが、面白いからそれでよし。「斑のチョウゲンボウ」の女将とのやり取りも、一層興味深いものになっています。

上巻のラスト、アレインがツンデレのモードに告白する件は、中世の趣きを残しながらも正統なツンデレの返しで、見事と言うほかはありますまい。星一つ。その父親がまた、誰にでも決闘を挑んでしまう「決闘マニア」で、アレインがモードに対する想いをなかなかオープンにできないあたりも、ベタな展開ですが楽しめます。大いに笑わせてくれたナイジェル卿に星一つ

前述の通り、Wikipediaにはコナン・ドイルは「中世の騎士道を描きたかった」とありますが、『白の団〜』を読むと、実はもう少し通俗的な話を書きたかったのでは? と思わされます。そのくらい今回の「超訳」が素晴らしかったということでもあるのですが。



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by non-grata | 2014-02-13 08:42 | 読書

電熱グローブGK-777レビュー

d0252390_1394985.jpg気温5度という寒さの中、バイクに乗って映画を観に行ったわけですが、これは絶好の電熱グローブの試験だと思い、買ったばかりのコミネGK-777を引っ張り出してきました。

もう10年近く前になりますか、電池式の電熱グローブを使ったことがあるのですが、全然暖まらないわ(各単2電池1本だから当然)、ごわごわで操作しづらいわ(夏用グローブの上から冬用グローブをつけたくらい)で、使いものになりませんでした。最近はバッテリー式になり、性能も上がっていると聞いたので、楽天ポイントもたまっていたこともあって試しに買ってみることにしました。タイチのものが評判が良かったのですが、若干お高いのでコミネのGK-777をセレクト。これで立派なコミネマンだ。

温度は3段階選べて、「高」をテスト。走り出してしばらくすると、「温いか?」と聞かれると「冷たくない」と答えるくらいの温度になりましたが、途中、給油のためにグローブを外した途端に指がかじかんでしまったことから、いつものウインターグローブに比べるとはるかに役立つことがわかります。操作性も良好。値段相応でしょう。普段、冬場にバイクに乗ると指が冷たくなってどうしようもなくなるのに、この時はジーパンだけの太股が先にやられたので、そのことを考えてもこいつは手放せません。

結論:グリップヒーター最強。



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by non-grata | 2014-02-12 13:20 | ツーリング

(M05)男の生き方二題|『ラッシュ』感想(★★★★★)

d0252390_11542467.jpg全くF1に興味がない人が観ても理解できるし面白いし、けれどもこの映画がきっかけでF1に興味を持つかと言えば疑問。しかし人間、特に男性の生き方が面白く感じられるようになる作品です。

1976年のF1シーズンはちょっとした奇跡のシーズンでして、前年の王者フェラーリのニキ・ラウダに対して、マクラーレンに移籍したジェームス・ハントが激しいポイント争いを繰り広げます。運命を受けたのはドイツ・ニュルブルクリンクのレース。元々危険なコースでしたが、降り続く雨で路面コンディションも最悪。「20%を超えるリスク」を嫌うラウダはレースの中止を提議しますがハントたちの反対にあって強行されます。そしてラウダは、生死の境をさまよう大事故に見舞われるわけです。

で、物語はF3時代から因縁が続くラウダとハントの物語を描き、二人がF1ドライバーに昇格した翌年、1976年のシーズンに焦点を当てています。まずはラウダ(ダニエル・ブリュール)、ハント(クリス・ヘムズワース)ともにそっくりなことに星一つ。本人映像見て驚きました。

真面目で秀才肌のラウダと、奔放で天才肌のハント。二人の対比が鮮やかです。これは後にわかることですが、対比はしていても対立はしていない。男なら誰でも持っている二律背反な要素です。

例えばラウダ。誠実で美人の奥さんがいて、家庭を第一に考える生き方を貫いた結果、リスクを回避します。しかしハントは、「死に神を見返してやる」とばかりにリスクを度外視した走りをしてレースに勝利するわけです。どちらが正しい/間違っているとは言い切れません──二人は世界最速をかけて戦うF1レーサーなのですから。などということを考えさせられ、星一つ。後者の生き方が理想と思いつつ、実際にやっていることは前者、という人も少なくないでしょう。

ではラウダの生き方がつまらないかと言えばそんなことはなく、映画ではラウダ夫人との出会いをコミカルに描いています。ここも見どころで星一つ。初夜、幸せを持つのが怖い、それを失うのが怖いとつぶやく夫に夫人が返す「too late」にどきりとさせられます。

レースのシーンはド迫力。大音響のエキゾースト・ノイズを耳にするだけで身体が震えます。どうやって撮ったの? と思えるくらいにスタンドも車もリアル(富士の「たいれる」まで再現)。車好きでなくても魂を鷲掴みにされます。星一つ。「男は女が好きだが、車はもっと好き」「車を発明した奴も俺たちがこんなに車を愛したとは思っていまい」(うろ覚え)なる名台詞も飛び出します。

シーズン後、ラウダとハントの二人は思わぬ場所で出会います。ラウダは正直にハントの才能を認め、羨ましがりますが、ハントはラウダに対して同じ感情を抱いたかどうかは最後まで明かされません。ラストがなかなか意味深で星一つ。いい映画でした。



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by non-grata | 2014-02-12 13:03 | 映画

今年は何でも五つ星
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