おっさんノングラータ

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子育ては難しい|Parental Guidance

d0252390_748551.jpg子育ての経験がない者が語るなといわれるとそれまでだけれど、一番難しく、かつ大事なのは物事の善悪を判断する力を身につけさせることだと思う。まっとうな価値観を持たせる、とも言い換えられるか。そのためには親がまっとうな価値観を持っていなければならず、それが正しいという信念と確信で、責任をもって子供に教えるのだ。

アメリカという国も、民主的、資本的であれば国家の成熟度が上がるという価値観の下、異なる価値観を持つ国を子供と見なして体罰を与え、考え方を矯正した。それが朝鮮戦争あたりから信念が揺らぎ始め、ベトナム戦争に頃になると顕著となり、湾岸戦争の頃には罰することは罰するのだけれど、「いろんな価値観を尊重しなければ」と、子育ては放棄したようになった。

Parental Guidance』は、親と、その親の子育て感の対立をコメディ・タッチで描きつつ、個人にも国にも共通していえる、何かを教えるなら責任を持ちましょう、とのメッセージが読み取れる。

何でも機械が面倒見てくれる「スマート・ハウス」のプロトタイプが評価され、表彰式に呼ばれたサイモン夫妻(トム・エベレット・スコットとマリサ・トメイ)。久しぶりに夫婦の時間を楽しもうと、母方の両親に一週間、3人の子供の面倒を見ることを頼んだ。父方の両親は孫たちとよろしくやっている模様。こちらも負けてはいられないと、マイナー・リーグの実況の職を失ったばかりのビリー・クリスタルと(いつもの調子の)ベット・ミドラーは奮起する。

3人の孫は、上から順に思春期特有の悩み、吃音のため引っ込み思案、空想の友だちと離れられない、というステロタイプな問題を抱えており、両親は「何とかメソッド」で克服しようとしていた。祖父母も子供たちのやり方に従おうとしたが結果が出ず、自分たちの子育て感で孫に臨む。

その20世紀型のやり方も観ていてそんなに優れたものとは感じられないのだが、21世紀方子育てとのギャップが混乱と、笑いとを誘う。ただし、ネタバレになるが、決定的なところで決定打を与えられないビリー・クリスタルに少しだけ引っかかる。叩く者の覚悟のなさに、パックス・アメリカーナの完全なる終焉が感じられたり。

もっとも、夢を与えられれば、それに向かって物事を判断していくうちに価値観が育っていくと言えなくもない。映画の中では祖父が孫に与えることができたが、現実にはアメリカン・ドリームが死語になって久しく、せっかくの良いラスト・シーンなのに胸に迫るものがなかった。



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by non-grata | 2013-04-25 08:22 | 映画

「ささえる医療」は根付くか|『医療にたかるな』感想

飛行機から降りようとしたところ、後ろのほうで「お客様、やめてください」という客室乗務員の悲痛な叫びが。どうやら、エコノミーの客がビジネス・クラスの客席にあった何か(何だろ、飲まなかったワインとか?)を降り際に持ち去ろうとしてトラブルになった模様。その客は「ええからええから」と乗務員の制止を振り切ったようですが、日本人の「公」はどこいったんでしょうかね。




d0252390_7474093.jpg産経新聞の書評で興味を持って購入。一気に読んだ。

日本の医療システムは世界的に誇るべきものなのだろうけれど、利用者の善意に期待することで成り立っている部分も多く、少しの悪意、あるいは無知が積み重なると大変な問題に発展するということがよくわかった。しかし著者も書いている通り、大部分の日本人が「公」の意識を取り戻せば、たいていの問題は解決するようにも思える。さもなければ「ささえる医療」さえも食い物にされかねないと不安になる。

もらえるものはもらわないと損、というクソみたいな価値観をもったクソみたいな老害がのさばっている限りは、善意は踏みにじられてしまうんだろうなあ。

夕張の場合、行政の破綻という明確な敗戦があったから価値観の転換も発生し、新たな「公」が生まれるという希望もあるが、左翼の力も保守の力も組合の力もそこそこ強い大阪はどうだろうか。生保ビジネスすれすれの高齢者向け賃貸住宅の人口あたりの戸数が群を抜いていることからもわかるように、なかなか「公」は生まれない気がする。



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by non-grata | 2013-04-24 09:35 | 読書

助手に萌え死ね|劇場版『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』感想

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いやもう無茶苦茶面白かった。2クールあったアニメも面白かったけれど、その完成度を高めるという意味で、今回の劇場版があったように思います。テレビシリーズの伏線もきっちり回収してくれたし。そんなわけで、テレビシリーズを見ていない人は置いてけぼりですが、見た人は、劇場版を観られる環境にあるなら観るべき作品であります。

シュタゲといえばドクペが有名ですが、今回の飲み物は「よなよなエール」。持ち込み可能な劇場なら、是非ご一緒に。

観終わった後、『愛と死の間で』を思い出した。



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by non-grata | 2013-04-20 19:19 | 映画

『歴史探偵近代史をゆく』感想

d0252390_95428.jpgちょっと古い話になりますが、丸谷才一氏が亡くなられて、あの洒脱なエッセイがもう読めないかと思うと非常に残念。思えば半藤一利氏の『漱石先生ぞな、もし』を知ったのも、エッセイで取り上げられていたからだった。

本書は明治から昭和にかけての歴史の裏話を、「歴史探偵」が軽やかに語ってくれる。面白かったエピソードを紹介すると、

「奏上書から消えた二十字」
日露戦争が終わった後、乃木大将は明治天皇に奏上書を読み上げ、泣き崩れたのは有名な話。映画『二百三高地』で最も印象に残っているシーンだ。実はその草稿では、二百三高地戦の後の奉天会戦で兵力、弾薬が不足していた旨を語る二十字があったのだが、削られたというのである。軍が、明治天皇に対しても実状を隠蔽しようとしたと歴史探偵は推理するが、日露戦争以後の体たらくを思えばさもありなんである。

「三つの言葉」
『文藝春秋』昭和12年3月号の企画で、「世相を象徴する三つの言葉」というアンケートが面白い。二・二六事件の後、検閲が厳しさを増している中の企画である。
「柳瀬正夢 一、○○○。二、△△△。三、×××。」

「裏返しの東京裁判」
昭和20年6月、といえば敗戦の2カ月前で、主要都市は空襲によって破壊され、戦争継続が事実上、不可能な時期に電通が『宣伝』という小冊子を発行した。その中に「アメリカ処分案」なる一文が掲載されている。書いたのは戦後は政治家に転身した作家である。誰だろう。ともあれ、氏は現実で勝ち目がないから妄想で憂さを晴らす。処分案とはつまり、「裏返しの東京裁判」ということになる。ちょっと長いけど、面白いので引用しますよ。

第一。アメリカが英国から独立した時の、十三州の昔に返すこと。
第二。そこでその他の諸州はメキシコから掠奪したもの(名目は買ったとなっている)はメキシコに返し、ロシアから買ったアラスカはソ連に返す。
第三。ただしカリフォルニア州だけは日本の管理下におくこと。そうでないと、彼がまた太平洋に野心を持つからである。
第四。ハワイはこれまた日本の管理下におく。フィリピンは独立しているから、これは問題ない。
第五。立国の方針はモンロー主義を確守させる。モンロー主義に忠実でなくて、帝国主義的野望を抱くから、それが、世界を脅威させているのだ。

この先、個人的な恨み節も聞こえてくるのが面白い。

第七。アメリカの爆撃で日本が蒙った損害は(略)物資で賠償させる。(略)殊に海老を、沢山日本人に食わせて、減じた栄養の回復をはからせる。
第八。それから木材。(略)東京の家屋を、早く建てなくてはならない。
第九。(略)特にルメイには死刑を宣告す。

探偵も指摘しているけれど、戦略爆撃で日本人を皆殺しにしようと意気込んだルメイに、戦後、勲章が贈られている。

第十。日本を毒したのはハリウッドの映画だから、あの興業(ママ)の停止を命じ、その男女俳優は解放させる。

戦後になって、さらに毒された。

最後に、探偵が「異存はない」と書いている2項を紹介する。

第十四。人種平等の建前から、国内の黒人の待遇を一変せしむ。たとえば黒人は代議士でも一等車に乗れない州がある。そんな不都合な差別待遇のないようにさせる。
第十五。その他、アメリカの膨大な富を、人類の堕落のために使わないで、人類の福祉のために使はせる。

引用がすっかり長くなってしまったので、以下、簡単に。

パネー号事件における斉藤大使、山本(五十六)海軍次官の対応がまことにあっぱれだったこと。さらに日本国民は弔慰金を集め、子どもたちがアメリカ大使館にお詫びの手紙を送った。かくも立派な国民がいたのに、どうして不幸な戦争に突入してしまったのか、残念でならない。

●有名な「贅沢は敵だ」は、ロシア共産党が街頭宣伝に用いたと、永井荷風が『断腸亭日記』に書いているそうだけど、本当?

●阿部定事件を報じる際、はじめて「下腹部」という表現が新聞で使われた。新語なのだそうだ。

●毎日毎日、決められた通りの日課をこなす(だけの)マッカーサーに、「このままでは死にそうだ」と側近が愚痴を漏らす。それに対してマッカーサーは、
「人間と生まれて、自分に与えられた仕事をしながら死ねるとは、これほどの幸せがあるだろうか」
と返したそうだ。

この挿話を読んで、自分に与えられた仕事とは何ぞやと、頭を捻ってしまった。



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by non-grata | 2013-04-16 11:08 | 読書

円安万歳!?|『「円安大転換」後の日本経済』感想

d0252390_15261011.jpg著者の考えはこの短いレポートを読めば明らか。いわゆるリフレ派。現在、日本経済が抱えている問題の多くはデフレに起因しており、デフレを克服=インフレにすることで薔薇色の人生待ったなし! というわけです。本当かなあ。

自国通貨の価値が下がることで輸入コストは増大し、コストプッシュ・インフレ(悪いインフレ)が起こる。これはわかる。しかし円安によって日本の名だたる企業の収益がこぞってプラスに転じるかどうか、これについては疑問が残る。『新・国富論』で喝破されていたように、大企業の多くが海外に工場を有していたり、現地ではドル決済を行っていたり、為替リスクのヘッジを行っているので、円安即業績の回復っていうわけじゃないよね。

昨今のトレンドで投資家は儲かるかもしれないけれど、ディマンドプル・インフレにならない限り、つまりは少子化問題のほうを克服しない限り、日本経済の地盤沈下は避けられないと思うわけです。

世界大恐慌の直前、靴磨きの少年までが株の話を始めたのでこれは危ないとウォール街の投資家が感じたそうですが、勤務している会社でも、机の上にあったこの本を見て、「まだ株は上がりますかね」と投資の話をしてきた。靴磨きと派遣社員を同列に扱うのはどっちに対しても失礼な気がするが、その逸話が思い出された。もっとも、そもそも株など持っていないので、気に病むことはないのだけれど。



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by non-grata | 2013-04-15 15:46 | 読書

原点回帰で新しく|『宇宙戦艦ヤマト2199』第五章「望郷の銀河間空間」感想

d0252390_11592057.jpgテレビ放映も始まったことだし、いつもより観客が多いかと思ったけれど、そんなこともなく。ネタバレが嫌か、あるいは、公開2週目から配布される森雪のポストカード目当ての人が多いのか。けれど、1週目に観た者でも、もう1回劇場の大画面で観ようかと思わせる内容でした。以下、ネタバレ注意。

第15話「帰還限界点」
いろいろあるけれど、ヤマト1艦がガミラス帝国に立ち向かうことで抑圧された人々が反乱の狼煙を上げるという件に落涙。松本ハーロック的な熱さあり、戦力の分散を強いられるという伏線あり。しかし、ドメルの妻が反政府組織に与しているのがもともとの設定だったとは。

ヤマトvsドメラーズの接近戦は熱いものがあります。その時の、沖田vsドメルのにらみ合いもたぎる!

第16話「未来への選択」
イスカンダルまで引っ張ると思っていたヤマト・クルーの反乱が、まさかのビーメラ4で発生。旧作でガミラスに反旗を翻したビーメラ星に、『2199』ではイスカンダルから使者が送られていたことが明らかになり、一つ伏線が回収されたと思ったら、ここで新たな伏線が現れる。

ヤマト艦内が一枚岩でないのと同様、ガミラス帝国も盤石とはいえない。その両者で同時に内乱が発生するのが面白い。

第17話「記憶の森から」
第18話「昏き光を越えて」
ゲートを使って航海日程を短縮したのと、ガミラス艦隊を後方に置き去りにした辻褄合わせに唸らされる。旧作で、「本国に艦隊がいないのは何で?」なんてツッコミがありましたが、これで論破できる!?

古代兄、真田、新見の関係が描かれたのが面白かったけれど、古代兄と新見がつき合ったってのは、真田に意識させるための新見の作戦だよね。彼女のハニー・トラップが役立たずなことは、第16話にて既に明らかにされているんたけれど。

若本があまりに若本でブリタニア王とダブって見えてしまったり、沖田が死中に活を求めすぎだろうと思ってしまったりしたけれど、1隻対10,000隻の戦いじゃあ仕方ない。「そうするしかないじゃん」と思わせるだけの説得力が十分に感じられるのです。

糸目の曲者が退場したようにも思えますが、彼らもあと1回は活躍の場が与えられるはずなので(ほら、艦内であと1回や2回は戦闘があるじゃないですか)、きちんとした散り際が用意されているものと期待しているのです。



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by non-grata | 2013-04-15 12:33 | 映画

今年は何でも五つ星
by non-grata
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