おっさんノングラータ

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中長期のトレンドは円高か?|『日本経済「円」の真実』感想

REGZAで録画したデータをBDに焼くのにえらく時間がかかる、とぼやきましたが、原因は無線LANの速度。REGZAとPCは同じ無線LAN子機を介して有線LANで接続されているはずなんですが、PCの無線LANが優先されてしまったのが転送速度の低下を招いた模様。無線LANを無効にした途端、28Mbps程度の転送速度が得られたのでした。年末年始、レグザリングしない時間帯狙って『シュタインズ・ゲート』をBDに書き出したい。




d0252390_10334781.jpgヒトラーの秘密図書館』を読んでそう感じたんですが、自分も自分の考えを補強するために読む本を取捨選択してしまう傾向があります。新書は特にそう。ワンフレーズ・ポリティクスよろしくタイトルで全てを語ろうとするもんだから、例えば「TPPで日本経済復活? 胡散臭い!」と表紙だけで拒否反応を示してしまい、時間の無駄とばかり手を出すことはありません。「世界同時恐慌のリスクが高まっている」なら、「だよねー」と同意しつつレジに持って行くわけです。インターネット、特にツィッターは同じような考えの人をフォローする傾向が高く、そんなつぶやきばっかり見ていたら考え方が硬直化するので危険、みたいな論調がありますが、何のことはない、本だって同じ危険が潜んでいる。結局、リテラシーの問題なんですね。

本書は最近の経済に関するニュースや通説に、「ミスター円」こと榊原英資氏が反論を加える内容。例えば、
「為替介入で円高を是正せよ」→「円高じゃないし、効果ないし」
「金融緩和で円高解消」→「十分緩和しているし、金融緩和じゃ為替誘導できないし」
「助けて! 円高が止まらないの」→「名目と実質実効レートで語れ」
とまあこんな感じ。初版発行が10月17日で購入した4刷の発行日は11月15日。野田内閣解散後に途端に円安に振れ、安部首相が日銀にさらなる金融緩和を要請したもんだからさらに円安が進みと、短期で見ると、冒頭で語られる「真実」がことごとく外れているなかなか香ばしい展開です。また、
「円高が輸出企業を苦しめている」→「円高以外に原因があるだろう」
としていて個人的には同意なんですが、円安になった途端に株価が上がり始めているのも微妙な感じです。

と、短期で見ると大丈夫か、この本? となりますが、1日5兆ドル動く為替市場に対し、はした金程度の金融緩和策が影響するとも思えないし、アメリカやユーロで明るい話題は聞かないしで(財政の崖ってどうなっているんですかね。あと5日しかないんですが)、そう考えると著者が書いている通り、まだ安全と思える円を買おうとする動きに戻りそうな気がします。戻らないとすれば日本国際が暴落する時で、原資がない中、国債をばんばん発行して公共工事を乱発するようなことがあれば、それも否定できんよなあ、と思ったりするわけです。

で、安部首相は「強い経済を取り戻す」と会見で述べていましたが、「日本経済は成長期から成熟期に入ったんだから、成長戦略はもう不要なんじゃない?」というのが本書の主張。人口も減るし、成長率なんて1〜2%程度でいいじゃん。

がつがつ生産して輸出して、借金して内需拡大して、円安で輸入コストが上がってもそのぶんを輸出でカバーしてという昭和スタイルが通用するならいいんですが、人口も減るし、耐久消費財もだいたい行き渡っているし、これ以上の内需を喚起するのが難しいのなら、円高の恩恵を受けて価格を安定させて、「サービス」など無形の価値を輸出するほうがいいんじゃないかなあと思ったりするわけです。円高万歳。

円高どんとこい、TPP反対、成長戦略まんどくせ、がモットーの自分には、何とも都合の良い一冊でした。



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by non-grata | 2012-12-28 11:42 | 読書

性差の違いは?|『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』感想

新幹線で眠ると、どうしてああ疲れてしまうんだろう。




d0252390_1181511.jpg男子だけがかかる疫病「赤面疱瘡」によって男性人口が激減した江戸時代の日本。それまで男性がしていたことを女性がするようになり、力仕事はもちろん、政治も、将軍も、女性が務めるようになった。当然、世継ぎを確実なものとするシステム「大奥」には、見目麗しき男性が全国から集められる。よしながふみのコミックを原作とし、少し前までドラマも放映されていたので、その設定はお馴染みのことと思う。

よしながふみと言えばBLコミックの大家。あまりコミックは読まないのだが、週刊モーニングで連載している『きのう何食べた?』は愛読している。極めて実践的なレシピが載っているのも嬉しい。

それはさておき、男女が逆転しても大奥におけるドロドロとした人間模様は同じ。となると、大奥というシステムが憎悪や怨嗟を簡単に生み出してしまうのね、と妙に納得してしまう。江戸時代に詳しい人なら、史実と劇中で描かれていることの差違と性差の関連に気づくのだろうが、生憎その辺りのことには疎いので、(大枠では)やってることは一緒じゃん、と思ってしまう(小並感)。

堺雅人に西田敏行、菅野美穂に尾野真千子と、芸達者な役者が揃っているのだから、普通の大奥同様に、ねちっこい演技を期待するのも一緒。菅野美穂をめぐっての、堺雅人と尾野真千子との静かな戦いが見どころの一つ。

男と女の恋愛には打算が生じるけれど、男と男ならピュアな恋愛が期待できる(らしい)。綱吉と吉保は(男女逆転して)男同士だからピュア。右衛門佐と綱吉は男女なのだけれど、右衛門佐の役回りは女であって、最後には男に戻り、綱吉の役回りは男であって、最後には女に戻ってと、いろんな交錯の後に打算のない男女の恋愛に発展して、男×男よりピュアな関係になっているのが見事だが、これはもう、菅野美穂と堺雅人の演技力の賜物だろう。綱吉の閉経後に結ばれるあたりやっぱり男×男じゃないかとか、出産という一大イベントが雌を打算的にさせるのだなあとか、種の保存に対する本能だとか、底意地の悪さが透けて見えそうで見えないのはさすがだ。



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by non-grata | 2012-12-27 11:55 | 映画

蔵書は人を表す|『ヒトラーの秘密図書館』感想

d0252390_17392876.jpg『ヒトラーの秘密図書館』というタイトル、「その一冊が、男と欧州の運命を決めた。」という惹句に衝動買いしてしまった。が、原題は『Hitler's Private Library』であって、他人に見られて困る蔵書を隠していた特別な図書館があったわけではなく、「一冊」で一人の人間が形成されたわけでもない。そりゃそうだ。

アドルフ・ヒトラーは学歴がないことのコンプレックスからか、とにかく本を読んだそうだ。一晩に一冊は読む。蔵書の数は1万6000冊──その大半は権力の座についた後、献本されたものだそうで、全てに目を通したわけではないけれど、たいへんな読書家であったことには違いがない。本書は、ヒトラーが第一次世界大戦に従軍した時から戦後、権力を掌握して総統となり、第二次世界大戦が始まり、ドイツ第三帝国が破滅するまでの足取りを追いつつ、その時系列に沿ってヒトラーが読んだ本を紹介する。1万6000冊の殆どは散逸してしまったが、戦利品として持ち出されたものもあり、1300冊ほどはアメリカに現存するそうだ。

取り上げられているのは10冊。
『ベルリン』マックス・オスボルン
『戯曲ペール・ギュント』ディートリヒ・エッカート
『我が闘争』第三巻アドルフ・ヒトラー
『偉大な人種の消滅』マディソン・グラント
『ドイツ論』ポール・ド・ラガルド
『国家社会主義の基礎』アイス・フーダル
『世界の法則』マクシミリアン・リーデル
『シュリーフェン』フーゴ・ロクス
『大陸の戦争におけるアメリカ』スヴェン・ヘディン
『フリードリヒ大王』トマス・カーライル

読書によって自分の見識を広げることができるが、ヒトラーは自分の考え方を補強するために行った。主義主張という「鋳型」の中に、都合の良い考え方を放り込むために本を選ぶ。その顕著な例が『偉大な人種の消滅』だ。1916年に英語の原書初版が出版されたこの書は、アメリカの移民政策を制限するために書かれたもので「北欧民族は世界一ぃぃぃ!」を唱え、黒人やユダヤ人が劣っていること、あるいはその存在が国の根幹を危うくすると警告する。1925年に出版されたドイツ語版を読んだヒトラーは、我が意を得たりという境地だったはずだ。惹句の言う「その一冊」を選ぶとすれば、『偉大な人種の消滅』になるだろうか。

『シュリーフェン』は、有名なシュリーフェン・プランを立てたあの人。フランスを攻めるのに直接アプローチは駄目だ、ベルギーを迂回して右から回り込むべし、という戦略を提唱して、第一次世界大戦はいいところまでいった。第二次世界大戦でも、将軍連中はシュリーフェン・プランを採ろうとしたが、作戦計画書を積んだ飛行機が墜落、連合軍に捕獲されてしまったことによりシュリーフェン・プランは見直されることとなり、戦車による走破は不可能と言われたアルデンヌを突破する案がヒトラーによって選ばれた。これが大成功したものだから、以後、ヒトラーは机上の戦略家に過ぎないのに戦術レベルにまで口を挟み、たびたび戦況を悪化させた。蔵書の半数以上の7000冊は軍事関連だったが、自分に都合の良いように拾い読みした知識を押しつけ、参謀本部を困らせたのである。

真面目で模範的な伝令兵だったヒトラーが、どうして第三帝国の総統になったのか、紹介されている10冊だけで読み解くことはできないが、読む本や読書の方法が人に与える影響について垣間見ることができる。あるいは、その時々で読んだ本に焦点を当てたヒトラーの伝記としても楽しめる。

本棚に並んでいる本を見てプロファイルするわけでなく、「ヒトラーはこういう人」という結論ありきなので、伝記として読むのが正しいのかもしれない。



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by non-grata | 2012-12-26 17:38 | 読書

年末に読むもんじゃない|『日本の怖い数字』感想

自動車教習所に通って驚かされたのは、学科試験の合格率が低いということ。入所説明では半分近くが落ちると言われていましたが、自分たちが二輪免許を取得した時は7割は一発で合格していたような……。もっとも、昨日の仮免試験では、受験した12人全員が合格していたので、「半分近く」というのは職員の単なる印象に過ぎないのかもしれませんが。




BUFFALO BDXL対応 USB3.0用 外付けブルーレイドライブ BRXL-16U3
2階で使用しているREGZAがNASに対応していないので、そ奴で録画した番組を1階のREGZAで見るにはどうすんべ、と思っておりまして、手頃な製品が見つかったので購入してみました。同一ネットワーク上にREGZAとPCを置いて、REGZA側からPCのドライブを指定してダビングするだけの簡単操作。BDディスク1枚目は調子良くダビングできたのに、2枚目から転送速度ががくんと落ちて4.0Mbpsに。何で?




d0252390_10463833.gif読みかけの文庫がなかなか進まなくて気分転換にと、出張先の北海道で購入した新書。新千歳空港から関西空港までの機内で読了した──新書は出張のお供に最適だ。

タイトル通り、経済や福祉、教育、社会に関して、ここ10年くらいの景気の悪い数字が並んでおり、その背景にあるものを解説してくれる。提示される数字とそれが意味することに殆ど意外性が感じられないくらい、今の日本は行き詰まっているのねと思い知らされる。ここ15年で日本のGDP縮小率が約15%……だよね、景気悪いし。日本の富裕層人口はアメリカに次ぐ世界第2位……やっぱり格差が広がっているもんね。新生児死亡率の低さは世界一……医療は進んでいるもんね。

とはいうものの、「そうだったのか」と思い知らされる事実も。例えば、実質GDP(物価を考慮せず)ではリーマンショック後も500兆円を超えているが、これが名目GDPになると割り込んでおり、やっぱりデフレの影響は深刻であることがよくわかる。加えて、国民一人当たりの名目GDPの世界順位は18位(2011年)と、これから人口が減少していくことを考えればその深刻さはより大きくなる。格差は、「相対的貧困度」と「ジニ係数」で表される。前者は国民全体の可処分所得の平均値の半分未満を相対的貧困と見なし、後者は所得の平等度を0〜1で表す。相対的貧困度でワースト6位、ジニ係数でワースト11位、どちらも悪化しているし、特にジニ係数で言えば、累進課税制度の廃止でますます格差が広がる傾向にある(「個人所得税における税率の推移」という、非常にわかりやすい付表あり)。

新生児の死亡率は確かに低いが、これが1〜4歳になると先進国19カ国中14位(2008年の数字)。小児集中治療室(PICU)の整備が遅れていることが原因だそうで、ヨーロッパ諸国と比較して、人口割合で1/3〜1/4しかないのだという。ただでさえ少ない子どもを危険にさらしてどうする。

子どもと言えば、マンションの高層階暮らしと妊娠中絶率という興味深い統計も載せられている。これについては「都市伝説」的なことが言われてきたが、数字を見せられるとオカルトだと一笑に付すことができない怖さがある。

とまあタイトル通りの内容で、年の瀬に読むにはちと内容が暗い。暗いけれども現状認識は大事だよね。



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by non-grata | 2012-12-25 11:19 | 読書

二人にはタッチャブルなネタ|『最強のふたり』感想

アニメ『中二病でも恋がしたい』が最終回を迎えまして、さすがの京アニ・クオリティはおいとくとしても、最後の一ひねりが意外性をもたらせてくれて、実に面白かった。ガール・ミーツ・ボーイ&ボーイ・ミーツ・ガールという螺旋構造だったんですね。そこがまた中二病らしくてよろしいじゃありませんか。

中二病が目的化してしまうといたたまれないですが、退屈な現実(と書いて「リアル」とルビを振る)を変える手段としてなら大ありだ──というのが、最後のナレーションの趣旨なんでしょう。




d0252390_8301383.jpg金はあるけれど事故で頸椎を損傷し、首から下が麻痺したフィリップ(フランソワ・クリュゼ )と、失業保険目当てで彼の介護に応募して、その飾らない態度が気に入られて本採用されたドリス(オマール・シー )との間で芽生えた友情を描く感動作、ということになるだろうか。フランスが抱える問題がその傍流に描かれる。その最たるは、貧困のために仕事に就く機会さえ得られない移民の貧困層。「失業保険目当て」と書いたが、就職活動をしたけれど、3回NGを食らうと失業保険が出るシステムになっている。ドリスは最初から自分が職に就けないとわかっていて、フィリップの介護士募集に応じるのである。

移民は学がなく、まともに働く気がない。そんな偏見もある。ここからはネタバレになるが、きちんと職に就いたドリスは、貯めた金で運転免許を取得し、再就職に成功した。フィリップとの交流で身につけた芸術に関する知識も、面接で役立った。適切な教育とチャンスが与えられれば、成功を収めることができるのだ。

白人の富裕層がどれだけレッテルを貼るのが好きかは、フィリップがしかけたいたずらでも明らかだ。その結果に対して調子に乗るドリスと、それを諫めるフィリップが面白い。

二人とも、差別される側であり、逆差別される側でもある。しかし二人の間にはそのどちらもない。この関係は最強だ。だから、「そのネタは笑えない」とフィリップが顔をしかめたドリスのいたずらでも、最後には二人して笑い飛ばせる*。ネタにされた独裁者は、障害者は断種、有色人種は劣等民族と決めつけていた。1940年5月、電撃的侵攻でフランスを征服しながら、あと一歩のところで連合軍部隊を取り逃がしたのがダンケルクだったのだ。ダンケルクからイギリスへ撤退した部隊は、後にヨーロッパ解放の原動力となる。その地で、フィリップとドリスは永遠の友情を確かめ合った。何とも象徴的なエピソードである。

* ヨーロッパのナチ・アレルギーは相当なもので、プラモデルのパッケージであってもハーケンクロイツは塗り潰されているし、デカールも分割されてぱっと目にはわからないようにしてある。



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by non-grata | 2012-12-21 09:28 | 映画

韓国経済入門|『韓国財閥はどこへ行く』感想

年末に『このミス』を読んで後、その年に出版された三津田信三の作品を買うという習慣がこの2〜3年続いています。昨日も『幽女の如き怨むもの』を購入。年末年始の密やかな楽しみにしているのです。テレ東系で放映される7時間時代劇も見なければ。




d0252390_8365121.jpg韓国大統領選が間近に迫っている。先頃、北朝鮮が衛星ロケットという名のミサイル(もともと「飛翔物」という意味なので、ミサイルで間違いないのだけれど)を発射したりしたものだから、対北政策に有権者の関心が集まったと言われるが、それまでは「経済民主化」が一つの争点だったという。経済の民主化とは、財閥だけが潤うんじゃなくて、国民全体に富が分配される経済システムへ移行するということ。サムスンや現代グループ、LGは儲かっているし、韓国経済の成長を牽引しているが、それ以外に属する多数の国民は好況感が感じられていないのだそうだ。最近の報道では、5人の韓国人大学生がいれば、1人は正規雇用、3人は非正規雇用につけ、1人は就職できないと言われているほど。

何故、このような格差社会が生まれてしまったのか? 朝鮮戦争直後は極貧国(1960年頃、韓国ま一人当たりのGDPは76ドル)であったが、軍事クーデターで政権を掌握した朴正熙は第一次経済5カ年計画に着手、炭鉱労働者と看護師を西ドイツに送り出して外貨を獲得してインフラの整備に勤しんだ。その後も時の政権主導で産業の育成が進められ、1973年にGDP404ドル突破(国連が定める貧困ライン=1ドル/日をクリア)。朴大統領がKCIAに暗殺された1979年には一人当たりのGDPは1693ドルに達していた。

サムスンや現代、LG(当時は金星)といった財閥は、その頃に力をつけている。経済の原動力として財閥の力が不可欠であり、財閥に有利な政策がとられていったのだ。

財閥のメリットは、何と言っても強力なリーダーシップによる即断即決が可能なこと。液晶テレビ事業がいけると思えば、製造ラインに集中的な投資を行い、国がそれを後押しする。しかも教条主義に陥ることなく、市場の変化に合わせて微調整も行う。

しかしデメリットも小さくなかった。アイディアや技術力を持つ中小企業があれば、大企業に有利な独占的な契約を結んで飼い殺しにしてしまって育成を阻む(このことは「サムスン動物園」と表現される)。前述したメリットを生かすには、トップに権力が集中する構図をつくらなければならない。そのためにはカネが必要で、不正な蓄財や資金流用も「やむを得なく」行われる。さらにそれを行ったトップは、大統領恩赦で罪に問われることがない──これが不公平感を増大させる。大統領選も近いし、これでは具合が悪い。そんなわけで李大統領は財閥を規制する方向へ舵を取り始めた。

財閥の関係者がベーカリー・チェーンを経営し始めて「町のパン屋さん」を次々に廃業に追い込むとストップがかけられ、中小の商店を壊滅させる大手スーパーマーケットの日曜日の営業を規制した。今後は財閥トップに対する恩赦も見直すという。大統領選において、与党セヌリ党も野党統合民主党も同じ方針を打ち出している。

こうした議論において、著者は気になることとして二つの点を上げている。一つは「財閥は悪」と決めつけている論調。民主化にはコストがつきものだが、必要以上に財閥を叩くことでそのコストが増加しかねるのではないか、という懸念だ。もう一つは経済情勢。IMF危機の時は問題は韓国国内だけだったが、今は欧米の経済の失速(外部の問題)に、少子高齢化(内部の問題)が加わっている。以前のような経済成長は期待しにくい。財閥の力を利用しつつ内需を拡大することが経済の安定化につながるので、民主化は避けられない。けれども下手に財閥の力を弱めて韓国経済を失速させるわけにもいかない。ホント、次の大統領は大変だ。



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by non-grata | 2012-12-18 09:43 | 読書

ちょっと詰め込みすぎ|『砂漠でサーモン・フィッシング』感想

近所の投票所が老人の寄り合いと化している件について。

投票率が6ポイントほど下がったと言っていましたが、実際どんなもんなんでしょ。投票率が低下したため組織力を持つ政党に有利に働き、政党数が増えたために浮動票が割れてますます有利になり、というわかりやすい選挙結果でした。

今回、自民党に投票したと思われる高齢者の多くは年金生活者であって、デフレのほうがありがたいはずなんですが、その自民党はインフレ・ターゲットの導入を示唆しています。本当にするのか、それとも投票してくれる有権者に阿って経済政策がぐずぐずになるのか、気になるところであります。

それはそうと、この前は近所のキッズランドで売られていた『ガルパン』の八九式中戦車が売り切れていてちょっと悲しい。35は大きいので48で展開してくれたら嬉しいんだけど。どうせフィギュアがつかないのなら……来年のワンフェスでは1/35スケールのフィギュアが大量に発表されるんだろうか。




d0252390_1065115.jpg「砂漠で鮭釣りをしたい」という依頼が、イエメンの大富豪(アマール・ワケド)からイギリスの水産学者のジョーンズ博士(ユアン・マクレガー)のもとに届く。そんな馬鹿な話、実現できっこないと適当にあしらおうとするが、大富豪は本気も本気、適当につくった見積もり5000万ポンドがイギリス政府に送られる。中東との明るい話題を探していた首相広報官(キルスティン・スコット・トーマス)もこの話に飛びつき、「サーモン・プロジェクト」は本格的に動き出す。

ここからネタバレあり。

大筋はそんなところだが、ジョーンズ博士が迎える「中年の危機」、大富豪のイギリス資産を管理している投資会社のコンサルタントハリエット(エミリー・ブラント)の恋物語、ただ釣りをしたいだけでなく、実は砂漠を緑化したいという大富豪の願い、アルカイダ(だよね)による暗殺未遂とダム乗っ取り、イギリス政府内のあれやこれやと、盛り沢山な内容。もちろん最後はハッピー・エンドに収斂されて、「自分のDNAに正直にあれ」「信じる者は救われる」という結論に落ち着く。

広報官と首相のやり取りが「LINE」のようなアプリで表示されるのが面白かったが、原作小説がメールや新聞、雑誌などの文章で構成されているというから、なるほどそういった映像手法をとったのか。天然鮭の譲渡に反対する各種の釣り雑誌も同じ流れだろう。

結局、釣り愛好者たちのバッシングを受けてプロジェクトは頓挫。プライベートでも、仕事でチャンスが舞い込んだと勝手に6週間もジュネーブに赴任することを決めた奥さんと破綻寸前となったジョーンズは離婚を決意する。「半年もすればここに戻ってくる」と奥さん。「あなたのDNAにはそう刻まれているの」

これでピンときたジョーンズは、養殖鮭でも遡上するはずだと確信。プロジェクトは再び動き出す。……だったら、ヒントを与えてくれた奥さんに感謝すべきだろう、とか、鮭に引っかけているなら、外洋に出ても最後は長年連れ添ってきた奥さんのもとに戻るんじゃないの? とか、どうにもすっきりしない。ハリエットが奇跡の生還を果たしたボーイ・フレンドをあっさり振ってしまうのも、彼がいい奴だけに(最後に見せたアラブ人への偏見はとってつけたようだったし)モヤモヤする。



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by non-grata | 2012-12-17 10:40 | 映画

そこはもっとストイックに|『渚にて』感想

何故か普通運転免許取得のために教習所に通い始めました。二輪と全然感じが違って苦戦中です。自家用車の所有が2台許されるならAT車限定にしたかも。




d0252390_14164590.jpg原作が非常に面白かったし、原発事故以来、放射能の見えざる恐怖とともに嫌でも生活しなければいけなくなった日本人としては今日的なテーマであり、読みながら頭の中で「映画化決定」を叫んでいたのだけれど、1959年に映画化されていたんですね。躊躇わずAmazonでDVDをポチる。

映画と違って自宅で見るDVDは集中力に欠けるというか、酒を飲みながら見るのがいけないんですかね。かなりの確率で途中で寝てしまう。残念ながら本作も、でした。見直す気にもなれず封印。

ただ、まあ一つだけ言い訳させてもらえれば、どうにも引っかかる改変があったために興味が失せたのだ。潜水艦の名前が〈スコーピオン〉から原作では同じく難を逃れて南米へ向かったことになっている〈ソードフィッシュ〉に変更された……ことではなく、艦長(グレゴリー・ペック)とモイラ(エヴァ・ガードナー)がラブラブ過ぎること。サン・ディエゴ探索から帰還した後、艦長がモイラと会いたいけど会えない、自分は妻帯者だし(死んでいるのは間違いないけれど、それを認めてしまえば本当に死んでしまうわけだし)、軍人だから(守るべき規律も有名無実と化しているけど、そのことを認めてしまうとやっぱり家族の死を認めることになる)と悶々とするところが漢泣きを誘うのに、一直線でモイラの家に向かってぶちゅーってのは、風情がないよねえ。その後でフレッド・アステアがやって来るわけだけど、彼を迎える二人は一発やってきました、といわんばかりの熱々ぶり。何か違う。原作は、二人ともストイックなんよ。

もちろん最後まで見れば感想もまた違ったものになるかもしれないけれど、139分は長い。期待が大きかっただけに残念無念。



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by non-grata | 2012-12-12 14:44 | DVD

これも一つの終活|『世界から猫が消えたなら』感想

猫が寝室から出ると言ってうるさいのでドアを開け、いったい何時やと思うてんねんと時計を見たら2時22分。猫の時間でした。ちょっと恐かった。




d0252390_1855284.jpg新聞の書評で取り上げられていたし、映画館で配られるフリー・ペーパーでも紹介されていて、家人も読むというので買うことにした一冊。しかし「LINE初の連載小説」だと知っていたら、果たして買ったかどうか……先入観って恐い。

あー、あんた明日死ぬから。でも死にたくないでしょ。だったら身の回りのものから一つ消すことで一日寿命延ばしてあげるから。前田敦子なら消していい? 駄目駄目、対象はこっちで決めるから。あんたはそれを消すか、今死ぬか決めるだけ。最初に消すのは……。というファンタジー。主人公に対するこの問いかけは、そのまま読者にも突き刺さる。あれが消されたら困るかな、消してもらっても大丈夫かな。

そうして考えていくと、自分を見つめることになる。その自分は何かと言えば、周囲を取り巻く人やモノでできた鋳型の空きスペース。いろんな人やモノに影響されて、自分という存在が成り立っているのだということを再認識させられる。

だから、鋳型を構成する一つでもなくなると、自分が自分ではなくなってしまう。何かの喪失と交換に寿命を延ばすなんて、あってはならないことなのだ。

なんてことを考えていると、自分は確実に死に向かっているのだなあ、と感じる。いや逆か。「死」を突きつけられるからそういうことを考えるのか。『渚にて』を読んだ後だから疲れるなあ。

未来に向かって歩いている間はせっせと鋳型をつくっている最中で、鋳型の出来を確かめるようになると、未来が向こうからやって来るようになるのかもしれない。でもって、自分の鋳型に足りないものを確認したら、それを求めて歩いていこう。という気持ちにさせられる。



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by non-grata | 2012-12-11 19:21 | 読書

外交官ミステリ|『天皇の代理人』感想

最近寒すぎ><




d0252390_1810416.jpg戦前戦中における日本外交史の謎を、「それ実はこんな裏があって」ということにしちゃった歴史ミステリ。駆け出し外交官・津村と、特命全権大使・砂谷が事件を追いかけるわけだが、タイトルで砂谷の正体がほんのりばれちゃうわけですが。短編連作で4話収録。シェリー酒片手に津村老人が回顧するスタイルで話が進む。

一発目は佐分利公使怪死事件。密室でピストル自殺をした佐分利公使だが、左利きなのに右手にピストルを持っていたり、普段は身綺麗にしている公使が寝間着で自殺するなど謎の多い事件だった。小説では皮肉な結末が用意されているが、その苦みが、この先の事件と日本の行く末を暗示している。

二つ目の事件は近代史のオールスター・キャスト! 吉田茂に白州二郎、大島浩が登場する。砂谷のキャラが(ドラマの)白州二郎とかぶる。キム・フィルビー(ケンブリッジ・ファイブの一人)もいたことだし、あるあると思わせる話。

三つ目、舞台はベルリン。それまでの二つの話は、ホームズ(砂谷)とワトソン(津村)による謎解きを楽しむタイプだったが、一転してスパイ・ミステリ風。二転三転する物語が面白い。

四つ目、今度はスイスへ。戦局いよいよ配色濃くなった日本はアメリカとの講和の道を模索する。そこで登場するのがフリードリヒ・ハック。詳しくはWikipediaでも読んでいただいて……「参考文献」で吹かないように。

短編4作、それぞれ趣が異なる「歴史ミステリ」が面白い。『氷海のウラヌス』も、任務に命をかける男たちの矜持が心地よい物語だったが、本作でも国を憂う男たちの姿に酔わされる。その努力が報われないのがまた!

どうしたってビター・エンドで終わるのは、歴史を知る読者にとって自明の理だが、最後におっと思わせる結末を用意してくれているので読後感は爽やか。難しいかもしれないが、続編に期待したい。



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by non-grata | 2012-12-07 18:54 | 読書

今年は何でも五つ星
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