おっさんノングラータ

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虐殺器官(伊藤計劃)

「虐殺「機関」に属する主人公が、虐殺「器官」を操る男と対峙するわけだが、群体の一部である前者と身体の一部である後者との相似性が面白い、というより恐い。「9.11」によって世界が狂気に支配されたのだとしたら、眠っていた器官が復活してもおかしくない。のだが、10年後の今年行われたアンケート調査を見ると、米国のやり方を間違っていると答えた米国民が75%いるそうで、少し安心。それが「海の向こうに、漠然とした戦場が広がっている」ことでごまかされた結果でなければだが。 」

以上が、読書メーターに投稿した内容。

台北へ飛ぶ前、関空の丸善で平積みして売られていたので即ゲット。何とも重い話なのでなかなか読み進めなかったけれど、主人公が標的と接触してからはラストまで一気読み。「9.11」からちょうど10年、本作を読むのは何とも感慨深い。

「仕事だから仕方がないという言葉が虫も殺さぬ凡庸な人間たちから、どれだけの残虐さを引き出」したかを考えると、まったくもってその通り。「仕事」を、「アジアの平和」や「民主主義を守るため」に置き換えるのも可。

小松左京賞を逃した理由に、虐殺器官の説明が不十分だとされていたが(後書きによる)、歴史を振り返ればそこに答えがあるような気がするが、どうだろうか。

実際、自由を享受しているように思えるものの、現実には「人々は見たいものしか見ない。世界がどういう悲惨に覆われているか、気にもしない。見れば自分が無力感に襲われるだけだし、あるいは本当に無力な人間が、自分は無力だと居直って怠惰の言い訳をするだけだ」

ならば、虐殺器官は簡単に制御され得るだろう。
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by non-grata | 2011-09-16 08:31 | 読書

ビブリア古書堂の事件手帖(三上延)

「「文学少女シリーズ」もそうだったけど、日常に潜むミステリと、それを解く聡明な女性、そしてその鍵が本(古書)というのは、絶妙な取り合わせで読後に幸せな気持ちに浸れる。ロッキングチェアー・ディテクティブならぬベッド・ディテクティブが、古書店主ならではの着眼点で謎を解いていく様が実に楽しい。「生きている者は誰でも業が深い」という言葉は、エピローグにかかるのか、それとも次巻以降への伏線か?」

以上が、読書メーターに投稿した内容。

いきなりルビが多くて「児童書かよ!」と驚いたが、気を落ち着けて最後まで読む。

短編連作で、一通り読むとそれはそれで一つの物語になっているという構成。メイン・キャラクターがステロ・タイプなのはご愛敬。

読書メーターではああ書いたけど、日常系ミステリ&ブンガクと言えば北村薫の「円紫さんシリーズ」がこの分野(?)のパイオニアであり、鉄板過ぎて、本作にしても文学少女シリーズにしても、後塵を拝するしかないというのが個人的な意見。文学少女シリーズは、ラノベなりの付加価値があると思うが、おっさん的には読んでいて辛くなることが多く(それでも本編は全部読んだ……はず)、反対に北村薫作品は安心して読める。頼りない「ボク」を文学好きのおねーさんが導いてくれるという話よりは、頭の良い女の子を知恵と知識を兼ね備えたきちんとした大人の男性が知的にエスコートする、というほうが、しっくりくる世代なのである。
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by non-grata | 2011-09-12 16:58 | 読書

広島学(岩中 祥史)

「結論を誘導するためにもっともらしい地理的・歴史的挿話を紹介する、県民性ガイドブック。途中で飽きるので一気に読もうとはせず、暇な時にぱらぱらと眺めるのが吉。小ネタ集として楽しめる。自分が違うからかもしれないが、「広島県民は自分の主義主張を相手が理解するまで語る」という指摘には違和感あり。本当にそうだっけ? 」

以上が、読書メーターに投稿した内容。
これについては特に追加することもなし。
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by non-grata | 2011-09-12 16:17 | 読書

下町ロケット(池井戸潤)

「『遠い空の向こうで(原作「ロケットボーイズ」)』や『アストロノーツ・ファーマー』といった海外のロケット映画が、個人の夢の実現が目標になっているのに対して、『下町ロケット』では会社の目標。宮仕えにとっては、『下町〜』のほうにカタルシスを感じる。とは言え、ロケット飛ばして皆ハッピーになれる作品に外れはないよね。」

以上が、読書メーターに投稿した内容。

100分くらいの映画にちょうどいい感じの内容。もっとも、あまり短いと、前半の特許侵害ネタが経常をプラスにするための露骨な伏線か、と思われてしまうかもしれないので難しいところ。そのくらい見ようによってはひどいご都合主義なのだ。ただし、前半から後半への流れで初めて工場の実態が明らかになるところはなかなか読ませるし、後の説得力につながっている。

「下町」と言っても、年商100億円にわずかに届かないだけで、創業以来一度しか赤字になったことのない優良な「町工場」が舞台。そこがロケットを飛ばすのに不可欠な部品を製造する。まいど1号を企画した東大阪宇宙開発協同組合のような泥臭さは感じられなかったのが、予想外であり残念たった。リアリティを考えるとそうなるんだろうけど。
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by non-grata | 2011-09-05 11:37 | 読書

ハーモニー

完全な人間を求めた結果、魂の必要性がなくなるなど、21世紀版の人類補完計画を想わせる。中東やアフリカ、そしてイギリスで起きた暴動が「SNS発」なのだとしたら、「ハーモニー」が水面下で始まっているのかもしれない。なんて。
ヒトは本来、社会的な生き物なのか反社会的な生き物なのか? じっくり考えさせられる作品。
『虐殺器官』も読まねば。

以上が、読書メーターに投稿した内容。

久しぶりに培倶人でも買うかー、と書店に行ったら置いてなくて、手ぶらで帰るのがもったいなかったので、翌日からの東京出張の友・文庫本を探して出会ったのが『ハーモニー』。伊藤計劃の名は聞いたことがあったし、帯の「フィリップ・K・ディック賞特別賞受賞」にも惹かれて購入。面白くて一気に読んでしまった。

舞台は21世紀後半、核戦争後の世界。そこでは人間が最も貴重なリソースであり、そのリソースを最大限、有効活用するために、成人になると「WatchMe」なる生体管理ナノマシン(でいいのか)を体内に取り入れ、完全な健康を保つ。と同時に、ネットワークに常時接続されて必要な情報が共有される。そこはプライバシーのない世界であり、人間の個ではなく、共同体が社会の最小単位となる。

ヒトが社会に属する生き物であれば、それを最大効率化したらどうなるか、という空恐ろしいシミュレーションでもある。
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by non-grata | 2011-09-03 10:56 | 読書

今年は何でも五つ星
by non-grata
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