おっさんノングラータ

(B41)今度は戦争だ|『ねずみに支配された島』(ウィリアム・ソウルゼンバーグ)

d0252390_11411963.jpg人間の移動によってもたらされた侵入種(ネズミなど)が、平和に暮らしていた固有種(カカポはじめ飛べない鳥など)の生態系をいかに脅かしたか。ニュージーランドからメキシコ、カリフォルニア、そして『捕食者なき世界』でも取り上げられたアリューシャンへと舞台は移り、侵入種の所業が描かれる。『文明の崩壊』にあったイースター島の話は、本書の仮説のほうがずっと納得がいく。侵入種vs固有種の戦いが従来型の戦闘なら、種の興亡は自然に任せるべきと主張する団体からの圧力もあり、ヒトvs侵入種の戦いはさながら非対称戦闘。




人類とともにネズミが移動し、太平洋の島々で穏やかに暮らしていた脆弱な固有種を潰滅させた。イースター島の文明が滅びたのも、そこで文明を築いた人々が最後の木の一本を斬り倒したからではなく、繁殖したネズミが若芽を食べ尽くしてしまったから。栄養カスケードが崩壊したことが理由だという。

絶滅したものは仕方がないとして、絶滅が危惧されている種を守るには侵入種を殲滅する必要がある──というのは一つの見識だが、果たしてそれが正解か。ヒトの都合で連れ込まれた種を、これまたヒトの価値観で絶滅するのは正しい行いなのか。そもそも、侵入種によって簡単に絶滅されるような種は、遠からず絶滅する運命にあったのではないか。そして、新たな生態系で捕食者となった侵入種を排除することは、『捕食者なき世界』そのものではないのか? こうした疑問に本書は一つの答えを提示してくれる。

アリューシャン諸島のキスカ島にネズミを持ち込んだのは太平洋戦争中の日本軍だった。その湾口に位置するラット島は、名前の由来の通りネズミが支配する島で、固有の海鳥は絶滅の危機に瀕していた。キスカ島でのネズミ殲滅作戦の前、肩慣らしにラット島に対する作戦が行われ、「無傷で」とは言えないまでも成功を収めた。そしていよいよキスカ島での作戦が行われようという時、島からネズミの姿が消えてしまったのだという。ネズミを持ち込んだのが日本の軍艦だったことを考えると、「キスカの奇跡」再び、というところか。

外来種が固有種を圧迫するといった話題が時折ニュースに取り上げられることがあるが、生態系を破壊しかねない、本当は深刻な問題であることを再認識させられる。



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by non-grata | 2014-08-11 13:15 | 読書

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