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おっさんノングラータ

(B19)清水俊二派です|『ロング・グッドバイ〔東京篇〕』感想

どれほど懐が寂しくとも、NHKの集金人を追い返せないほど我が家のNHK視聴率は高い。あとはテレビ大阪。もっとも、口座からの自動引き落としによって「似非国営放送」に搾取されるがままなのですが。

だからと言うわけではないが、NHKのドラマ、結構見ています。民放には真似できないほど資金が潤沢なんだから、そりゃあ良いドラマをつくれるわな……少なくとも今の民放が、レイモンド・チャンドラー原作の『ロング・グッドバイ』を下敷きに、日本を舞台にしたハードボイルド・ドラマはつくれない。いや本当、原作知らない人は置いてけぼりの展開で驚きました。

その脚本(渡辺あや)を司城志朗がノベライズした『ロング・グッドバイ〔東京篇〕』です。

(B19)清水俊二派です|『ロング・グッドバイ〔東京篇〕』感想_d0252390_1612245.jpg司城志朗と言えば、矢作俊彦と合作で『犬なら普通のこと』を発表しており、その筋には定評があります。いやもう本作も素晴らしかった。

例えば猫、キャットフード、鰹節の件。ドラマでは少なくとも第3回までは描かれなかったシーンですが──卵を温める猫はいましたが──これはロバート・アルトマンの映画『ロング・グッドバイ』へのオマージュ。こちらは「70年代のフィリップ・マーロウ」で原作とは別人ですが、猫が登場する〔東京篇〕も同じく「戦後東京のフィリップ・マーロウ」で別人なんですね。ただしアルトマンに比べて〔東京篇〕のストーリーは原作に忠実です。

同じ原作でも、日本では二つの顔を持つ、一つが清水俊二訳で、もう一つが村上春樹訳。原文に忠実なのは後者だが、原作の魅力を伝えてくれるのは、私にとっては前者。年齢とともに記憶力が低下したことを差し引いても、後者の台詞は覚えていないが、前者のなら空で言えます。〔東京篇〕は、清水俊二が描いたマーロウが、日本人のなりをして、日本語を話しています。そしていくつか、自分も使ってみたいと思える台詞を吐く。

ときどきひとは、私のことをお節介なやつだ、と言う。そうかも知れない。自分の歩く道もわからないくせに、ときどきひとに道を教えたがる。

不幸は群れをなしてやってくる、とシェイクスピアは書いた。幸もまた、とつけ加えるのを忘れたに違いない。

男の愚痴は、女の涙より始末が悪い。

(ロールスロイスに)乗っておいてよかった。二回目はぜんぜんちがう。女と同じだ、と思い、下品なことを、と珍しく自分を恥じた。

本作を読む予定があるなら、次に引用する台詞はその時まで取っておくべきです。もっとも、原作未読であれば大事にしておく意味は半減しますが。

中国人は世界中どこにでもいて、ときどきめちゃくちゃなことを言い出すが、作る詩はいつも美しい。

その詩があの名台詞に通じることは、言うまでもありません。

さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。






by non-grata | 2014-05-08 16:51 | 読書

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