おっさんノングラータ

(B01)村上海賊の娘/和田竜(★★★★★)

d0252390_830333.jpg今年最初に読了した本がこちら。昨年10月頃、書店店頭のポスターを見かけて以来、読もう読もうと思っていたのが年末にずれ込んでしまったのです。

流行作家=軽佻浮薄の印象があったので──誰とは言わんが、ほぼワンセンテンスごとに改行してすっかすかの歴史小説を読まされたので、それまで和田竜作品は敬遠していたのですが、思いの外、濃密な内容に引き込まれます。星一つ。もちろん歴史小説なのでフィクションなのですが、時折挿入される史料からの引用がリアリティを与え、うまい嘘のつき方になっているのに星一つ

物語は、瀬戸内海に覇を唱えた村上水軍、その中の能島村上の景姫の人物像を描きつつ、信長と本願寺との戦いを描写。上巻の大半はタイトルに「海賊」を冠しつつも地上戦が主体です。その意外性に星一つ

狂信の輩と正面から戦っても疲弊するだけと、信長は本願寺に対して兵糧攻めを行います。こうなると籠城側は、外からの救援の見込みがない限り絶対に勝てません。その鍵を握るのが(1)越後の上杉謙信と、(2)中国の毛利でした。陸は封鎖されていても海からなら兵糧を運び込める。そこで本願寺は毛利に依頼しますが、毛利としては(正確には小早川としては)謙信が動いてくれないのではリスクが大きい。しかも自家だけでは無理な話で、村上海賊に頼らなければならない。村上・毛利・小早川の思惑が静かに衝突します。

自家の存続を第一に考えるのが戦国の倣いなれど、他者を慮って行動を起こす景姫によって事態は大きく動き、木津川合戦が始まるのであります。このあたりになると史料もないようで、急に引用が減って「あ、盛ってるな……」と明々白々になりますが、外連味たっぷりなのでよしとしましょう。この価値観の違いが内面だけでなく、冒頭で醜女醜女と面罵される景姫が、当時の美的感覚からするとそうだからで、現在の価値基準では美人──南蛮人との交流があった当時の堺の感覚でも美人という外面の価値観の違いともリンクしているのも面白い。星一つ

下巻に入ってからの海戦の描写が白眉。命の価値が現在と異なるので殺し合いもあっけらかんとしたもの。それが泉州侍の心意気でもあるわけですが、『地獄でなぜ悪い』のカチコミシーンを見ているようで微笑ましくもあります。星一つ

製作費がかかりすぎるので映像化は難しいと思いますが、ロマンスあり、スペクタクルありなので、いっそ景姫が能島に流れ着いた外国人という設定で「ラスト・サムライ」ならぬ「ラスト・パイレーツ」でハリウッドで映画化するってのは。



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by non-grata | 2014-01-22 10:16 | 読書

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