おっさんノングラータ

世代で評価が分かれる|映画『キャプテンハーロック』

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例によってネタバレ上等でいろいろ書いております。未見の方はご注意。

5人で劇場に行き、そのうち4人はライブでテレビ・アニメ『宇宙海賊キャプテンハーロック』を見た世代、残る1人はハーロック初体験。ただし福井晴敏のファン。見終わった感想ははっきり別れて、4人はコメントに困り、1人は大満足でした。

コメントに困った4人は、ハーロックが主人公かと思ったら、ヤマが主役だったことに困惑。1人は最初からヤマが主人公だと思ったらしく、違和感なくお話を楽しめた模様です。

ハーロックの視点で捉えると、物語はかなりいびつです。「そのくらい許容範囲じゃん」という行為を許せずハーロックが軍に反旗を翻し、しかも絶体絶命に追い詰められたからと、その結果どうなるかもわからないのに地球を暗黒物質で包んでしまう。ダーク・マターに蝕まれた大地は回復の見込みがない。だったらと、宇宙の要所に時限振動弾100個を設置してそれを同時に爆破、宇宙全体をやり直そうと画策するわけです。それで「俺の旗の下に集え」「自由を求めよ」って言われても、ねぇ。

けれどヤマの視点になれば、最後はハーロック自身が自らの呪縛から解放され、真の自由を手に入れる、という話と理解できます。そのヤマ自身も、「CAUTION」シールで封印されているバルブを捻って温室を爆発させてしまい、兄と幼馴染みに瀕死の重傷を負わせてしまうという過去を背負っています。時々その過去に振り回されて行動が一貫しないんですが、何故か立入禁止のはずの地球に突入、大地に花が咲いているのを見て、地球の回復を確信することで、こちらも呪縛から解き放たれます。

「どうなるかわからないけど、地球を暗黒物質で覆っちゃうね。てへ☆」「駄目って書かれているけど、バルブ回しちゃうね。てへ☆」「むかついたから、生命維持装置のケーブル抜いちゃうね。てへ☆」と、おっちょこちょい3人衆の行動が、全宇宙を危機に陥れたように思えて仕方ありません。

どうも人類は、銀河系に散らばって暮らしているようですが、地球に対して強い執着を持つように描かれている。地球は聖地であり、ガイアを唯一神として崇めているわけです。それで地球が物語のキーワードになっているわけですが、異星で何世代も過ぎていれば地球に対する執着も薄れるでしょうし、「人類は衰退に向かっていた」とナレーションで言われても、映像に映し出される人々がそれほど絶望しているふうでもなし、ピンときません。

というのが、映画の後の反省会で出た否定派の意見。肯定派の目線は全然別のところに向けられていました。

彼女はポスト・バブル世代で就職氷河期を体験しています。バブル世代に対しては、お前らが日本を駄目にした、という強い憤りを覚えているそうで、本作で言えばハーロック(とその乗組員)はバブル世代になります。地球を駄目にした張本人=バブル崩壊で日本を駄目にした世代が、自分の責任を曖昧にしたまま一からやり直すなんてちゃんちゃらおかしい。駄目な地球=日本がかつては美しかったのだという疑似映像を見せているのはその上の世代=元老員(だっけ?)。これも老害。駄目だ駄目だと言われている地球=日本にも、回復の萌芽はちゃんとある、ということに気づくのがヤマ=ポスト・バブル世代、というわけです。そしてポスト・バブル世代はバブル世代のツケを払わされる運命にあります。

ヤマがハーロックを襲名することで、アルカディア号は「概念」へと昇華します。多分、そういうことですよね。これからは俺たちの世代が、地球=日本が持つ生命力を老害どもから守っていくのだと。概念なんだから、それを実行するのがヤマだけだとは限らない、と。気づいた俺たち世代が地球=日本を良くしていくんだ、と。だからいちいち口出しするな、否定するな。どんと構えて見守っていろ(最後のハーロックのように)。

バブル世代、あるいはそれより前の世代が『キャプテンハーロック』を観てどうにも居心地が悪い思いをしたのは、そういうメッセージが含まれていたからかもしれません──ということは、世代的に権力側に立っている者に対する批判が描かれているわけだから、やっぱり反権力の象徴として「ハーロック」が正しく描かれているじゃないか! ということになりますね。



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by non-grata | 2013-09-09 16:29 | 映画

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