おっさんノングラータ

歴史認識の問題|『コリーニ事件』感想

d0252390_1195778.jpg●最初は眠たい話でした。
●当時の認識では、兵士1人殺されたら報復で市民10人殺すことに大きな違法性はない。
●歴史認識は常に変わる。

以下、超ネタバレになるので注意。

67歳になるイタリア出身の労働者コリーニが、ドイツ産業界を代表するような大物(85歳)を射殺するシーンで幕開けする。犯人ははっきりしている。しかし動機は不明(登場人物の年齢と、ドイツの法廷ミステリということで出オチと言えばそれまでだが、気づかなかった)。容疑者の弁護を務めるのは、これが初仕事となる新米弁護士。被害者側はベテランの刑事事件専門の弁護士である。

主人公の新米弁護士が、親友(故人)の父親を殺した犯人を弁護するというのは皮肉な話だが、同じような皮肉が第二次大戦中にイタリアで起きていた。

1943年9月にイタリアが枢軸から脱落、ドイツ占領下に置かれた。以後、占領軍はパルチザンの破壊活動に悩まされることになる。そこでドイツ軍は兵士1人が殺害されたら市民10人を報復で処刑することを宣言、パルチザンでも何でもないコリーニの父親も捕まって銃殺されたのだった。

銃殺を指揮していたのはSSの将校。戦後、このことが裁判沙汰になったが、SS将校がしたことは上からの命令に従ったまでで、1人:10人のレートは当時の認識としてそれほど残虐行為であるとは言えない、という判断が下された。この辺り、うろ覚えで書いているので詳しくは本書を読んでください。

時効の問題もあって、ここに法律的な抜け穴ができてしまったため、コリーニは実力行使に出たというわけ。

「作中で語られた驚愕すべき“法律の落とし穴”がきっかけとなり、ドイツ連邦法務省は省内に調査委員会を立ち上げた」(帯より)そうだが、まさに、歴史とは歴史認識から始まって、歴史認識は時代によって変化するものである、ということを痛感させられる。昔、謝罪したからもう終わり、その話はなしなし、とは言えない、少なくともそういう態度を外に向けてはならないのだ。この点、ドイツには大いに見習わなければならない。



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by non-grata | 2013-07-09 11:33 | 読書

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