おっさんノングラータ

『巨鯨の海』感想|★★★また太地町に行きたくなる

d0252390_905693.jpgこれまでに2回、太地町を訪れたことがあって、1回目は純粋に観光。くじらの博物館に行ったり、イルカショーを見たり。2回目は無性に鯨が食べたくなり、くじら祭へ。国際司法裁判所の判断次第では、今年のくじら祭は中止になるんですかね。『巨鯨の海』を読み終えたので、もう一度くじらの博物館へ行って、夷様をいただこうと思ったのだけど。

『巨鯨の海』は太地町を舞台にした短編小説集で、太地町に生きる人々が主人公。古式漁法での鯨魚取りは死と隣り合わせだが、鯨を仕留めれば浜が潤う。いたずらに「狩る」のではなく、人間も、鯨も、生きるために戦っていたのだということを教えてくれる。

何しろ文章が巧いので、捕鯨シーンは迫力満点。血潮を浴びたり、浜が血で染まったりといった光景が目に浮かび、血と潮の混じった匂いまで漂ってくるが、少しも嫌悪を感じない。それどころか、自分が太地町の住人の一人になったような錯覚に陥る。ああ、でも生の皮とか肉は食べられそうにない。

どれも面白い話だが、特に印象に残ったのは、ニートが本気を出す話。捕鯨に関する仕事ができないなら、太地町では丁稚になるか(計算ができないと駄目)坊主になるかしかないが(読み書きできないと駄目)、どちらも苦手な主人公がついに家から追い出されそうになる。ニートが下した決断とは? 竜涎香の話も切ない。鯨の腹の白さが持つ色っぽさと、女性の下腹を重ねる話は、想像できるだけにちょっと恐い。明治になってからの話は、考えさせられるものがある。

個々の話につながりはないが時系列で並んでおり、江戸時代から明治初期にかけての太地町の捕鯨の歴史を概観できる。1854年に日米修好通商条約が締結されて以来、鯨が捕れなくなり、明治には古式漁法による捕鯨が幕を下ろすわけだが、つくづく日本の捕鯨は、外国の都合に翻弄されるのだなあと嘆息する。



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by non-grata | 2013-06-27 09:53 | 読書

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