おっさんノングラータ

勢いは買う|『狭小住宅』感想

d0252390_1632420.jpg「今年のすばる文学賞はすごい」という手書きポップにそそのかされ、紀伊国屋本町店で購入。書店員さん、いい仕事しています。

都内不動産会社を舞台に、新卒で入社した主人公が挫折を味わいながら一端の営業マンになるまでを描く。作者インタビューがこちらに。不動産を買う側と売る側の攻防がリアルに描かれていて、家を買ったことがある者なら、本文で描かれる営業の手腕に「あっ」と思ったはずだ。かくいう自分も思い当たる節があるが、「一生ものの買い物だから客はなかなか決断しない。決断を促して契約することを『殺す』と表現する」のが一般的な客だとしたら、さぞ楽な客だったに違いない。しかし本書を先に読んでいたら、そう易々とハンコは押せなかったことだろう。

不動産に限らず、直販に近い営業マンからは独特の臭気が漂う。本作の主人公は無臭だったために売れず、首を覚悟で会社のお荷物になっていた狭小住宅を執念で売り、課長から論理的なアドバイスを受けて成長し、成績が上がるとさらに数字を追いかけて臭気を発するようになり、思うがままに客を殺せるようになる。果たしてそれが本人にとって幸せか否かは、読んだ人によって意見が分かれるところだろう。

すばる文学賞受賞作を読んだのは、もしかすると94年の『十九分二十五秒』以来だが、若さに任せた勢いがあって、いいものだ。



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by non-grata | 2013-03-15 16:23 | 読書

今年は何でも五つ星
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