結論「メディアリテラシーを持て」|『ネット右翼の矛盾』
本を読めるから、という理由で通勤に電車を使っていて、読書時間の99%が電車の中。しかし電車の中ではスマホ派が大半を占める。じろじろ見るわけにもいかないので正確なところはわからないが、相変わらずゲームをしている人が多いが、最近は「まとめサイト」をまとめたアプリを使っている人が目につくようになった。印象論でしかないから実態はわからないけれど。
ニュースのトレンドを追っかけたり、暇つぶしに便利なので自分もよく使うけれど、まとめ方一つでいかようにも総意を特定の方向に向けられるので、書いてあることを鵜呑みにはできない。まして、タイトルだけ読んでわかった気になっていると危険ですらある。
適度に誇張や省略がなされていて、歯切れがいいし、読みたいことが都合良く書かれていたりするので余計にたちが悪い。知らず、自分の中で特定の考え方が醸成されて、それがぼやっとした民意になったりすると、ネット発の怪しげなムーブメントへと発展する。例えばネット右翼。「ルサンチマン気味の韓国嫌いがあって、そこから嫌いな韓国による不当な攻撃を受けた日本人、そして不遇な自分という論法で、不利益を蒙って現在望ましい環境にいない自分を受け入れるプロセス」を助長する存在として、嫌韓まとめサイトなり、Twitterなりがあげられるだろう。
本書は、ネット右翼と呼ばれる人々の生態や思想について取り上げている。興味深いのは第2章「弱者のツール」(山本一郎・著)にある具体的な数字。ネット右翼は最大で120万人規模、アクティブにネット上で活動しているのが10万人。「兵庫、岡山、広島あたりがネット右翼発祥の地と思われるくらい、偏在してい」るのだという。
今は知らないが、35年くらい前の広島市内では、漠然とした韓国人に対する差別、逆差別があったのを記憶している。実体験はないが、『はだしのゲン』で描かれたようなイメージか……あるいはそのイメージが現実にあったものと勘違いしているだけか。ともあれ、平和教育、同和教育に熱心な土地柄だったので、その反動がネット右翼につながったのかと推測もできる。
ネット右翼が問題なのは、誤解に基づく過てる衝動によって、その誤解を拡散したり、実力行使に出たりすること。そんな言説に振り回されないようにするためには、各人がメディアリテラシーを持ちましょう、という結論になる。
「人は溢れる情報を手に入れることができるようになった。それは確かに情報革命のお陰だ。ところが、その利便性が高まるが故に、知りたければほぼ無尽蔵に情報を得られるようになる一方、人が処理できる情報量は、人類が生物として誕生してからほとんど変わっていない。新しい情報を仕入れ、考え方を身につけること、それはすなわち教育そのものである」
「情報社会が進展するほどに実は簡単に情報の海の中で孤立し、同好の士と共にタコツボ化していく現象そのものであって、他人に対する理解や関心、もっと広くは異なる世代との共有体験の喪失でもある。それは、昔の人たちが言っていた「常識」や「教養」が失われている世界なのだ」
と、ネット右翼本ではあるが、それ以外の人々を含むネット民(笑)がいかにインターネットを利用するのかを考えさせる一冊である。
ニュースのトレンドを追っかけたり、暇つぶしに便利なので自分もよく使うけれど、まとめ方一つでいかようにも総意を特定の方向に向けられるので、書いてあることを鵜呑みにはできない。まして、タイトルだけ読んでわかった気になっていると危険ですらある。
適度に誇張や省略がなされていて、歯切れがいいし、読みたいことが都合良く書かれていたりするので余計にたちが悪い。知らず、自分の中で特定の考え方が醸成されて、それがぼやっとした民意になったりすると、ネット発の怪しげなムーブメントへと発展する。例えばネット右翼。「ルサンチマン気味の韓国嫌いがあって、そこから嫌いな韓国による不当な攻撃を受けた日本人、そして不遇な自分という論法で、不利益を蒙って現在望ましい環境にいない自分を受け入れるプロセス」を助長する存在として、嫌韓まとめサイトなり、Twitterなりがあげられるだろう。
本書は、ネット右翼と呼ばれる人々の生態や思想について取り上げている。興味深いのは第2章「弱者のツール」(山本一郎・著)にある具体的な数字。ネット右翼は最大で120万人規模、アクティブにネット上で活動しているのが10万人。「兵庫、岡山、広島あたりがネット右翼発祥の地と思われるくらい、偏在してい」るのだという。
今は知らないが、35年くらい前の広島市内では、漠然とした韓国人に対する差別、逆差別があったのを記憶している。実体験はないが、『はだしのゲン』で描かれたようなイメージか……あるいはそのイメージが現実にあったものと勘違いしているだけか。ともあれ、平和教育、同和教育に熱心な土地柄だったので、その反動がネット右翼につながったのかと推測もできる。
ネット右翼が問題なのは、誤解に基づく過てる衝動によって、その誤解を拡散したり、実力行使に出たりすること。そんな言説に振り回されないようにするためには、各人がメディアリテラシーを持ちましょう、という結論になる。
「人は溢れる情報を手に入れることができるようになった。それは確かに情報革命のお陰だ。ところが、その利便性が高まるが故に、知りたければほぼ無尽蔵に情報を得られるようになる一方、人が処理できる情報量は、人類が生物として誕生してからほとんど変わっていない。新しい情報を仕入れ、考え方を身につけること、それはすなわち教育そのものである」
「情報社会が進展するほどに実は簡単に情報の海の中で孤立し、同好の士と共にタコツボ化していく現象そのものであって、他人に対する理解や関心、もっと広くは異なる世代との共有体験の喪失でもある。それは、昔の人たちが言っていた「常識」や「教養」が失われている世界なのだ」
と、ネット右翼本ではあるが、それ以外の人々を含むネット民(笑)がいかにインターネットを利用するのかを考えさせる一冊である。
by non-grata
| 2013-02-13 11:57
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