おっさんノングラータ

スクリューフレーションなう|『日本防衛論』感想

d0252390_16465458.jpg帯に踊る「欧米没落!日中激突!」の惹句が何とも勇ましいが、内容はもう少し控えめ。2012年末の時点で日本は六つのグローバル・リスクを抱えているが政治家も役人もそのことに気づいていない……ということでその六つのリスクを解説し、ではこのリスクを回避するために日本はどうしなければならないか? を著者なりに分析している。六つのリスクとは、
●ユーロ危機
●アメリカの景気後退
●新興国の構造不況
●地政学的変動
●気候変動
●地殻変動
である。
言われてみると「なるほど」というものばかりだ。

ギリシアもスペインも統一通貨ユーロのために為替切り下げによる輸出拡大を行えない。アメリカの景気後退が長引くと、回復のために攻撃的な性格を帯び、国際経済の不安定要因になりかねない。リーマンショック以降、新興国の成長は鈍化。これに政情不安が重なると、地政学的変動につながる。その地政学的変動では、既にアメリカの影響力が低下した中東で混乱が生じている(シリア内戦)。この混乱がさらに拡大すると、日本のエネルギー政策に深刻な影響がもたらされる。気候変動は食糧問題に直結するし、地殻変動は言わずもがな。暗い話題ばっかりや!!

と書きつつ、さらに暗い話題。物価は上昇するのに給与据え置きのスタグフレーションが警戒されているが、経済規模の拡大&賃金低下&食糧・エネルギー価格の高騰によって中産階級が没落する「スクリューフレーション」が既に日本で発生している。スクリューフレーションは貧富の格差を拡大する。中間層の購買力が低下しているところに金融緩和を行っても、余剰資金は市場に流れ出すだけで食糧やエネルギーの価格を押し上げる。金融緩和で円安になれば輸出企業はウハウハ……にはならない。世界的な不況のため、輸出量が極端に増えることはない。それよりも円安によって食糧・エネルギー価格がさらに高くなり、低所得者層を直撃することのほうが大きい。

エネルギー問題に関して、著者は原発再稼働推進派だ。見かけのコスト・パフォーマンスは原発のほうが高いに決まっているが、事故を起こした時と放射性廃棄物を勘案するとどうか? 前者に関しては、福島は駄目でも女川は大丈夫だったのだから、ちゃんと備えれば深刻な事故に発展しないはず。後者についてはスウェーデンの例をあげ、民主手続きを経て対応することが可能であると説く。犠牲社会を容認しない日本ではスウェーデン式にはいかないかもしれない。

まずはデフレ克服、次に内需拡大によって輸入を増やしてアジアにおける日本のプレゼンスを増して、中国にうるさいことを言わせないようにするってことなんでしょうかねぇ。
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by non-grata | 2013-02-04 18:05 | 読書

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