おっさんノングラータ

主人公とともにボクシングを学ぶ|『空の拳』感想

d0252390_1705140.jpg日経新聞のレビューを読んで興味が湧いたけれど、そりゃ連載していた新聞だからべた褒めするよなあ、とも思って何となく手を出さずにいたけれど、博多駅の地下にある書店で遭遇、最初の数頁を立ち読みするとビビッときて購入を決意した。amazonも便利だけど、こういう出会いがあるので書店通いを大事にしたい。

友だちなし、彼女なし、文芸部を志望したのにボクシング専門誌『ザ・拳』に配属された空也。いずれ異動があると思いつつも、生来の生真面目さを発揮し、ボクシング雑誌に関わるならボクシングのことを理解しないとと、取材で訪れたジムに入門する。そこで年齢的に近いプロボクサーと交歓することで、ボクシング以外のことも学び、成長していく。

何より試合の描写が秀逸だ。主人公目線で語られるため、最初は何が起こっているのかわからなかった展開が、取材経験を積み、また自らも身体を動かすことで理解を深めていくことで、具体的なものへと変わっていく。最後に描かれる試合では、闘っているボクサーの心情までが克明になるのだ。このシーン、まるで昭和の街頭テレビの時代にタイム・スリップするよう。

21世紀を迎え、日本のみならず世界中が大きく変化した時代。しかしジムの中は、リングの上は、そんなことはお構いなし、ストイックな空気が流れ続ける。果たしてそれは、ボクシングだけが持つ不変な何か、例えば剥きだしの闘争本能を遠慮なくぶつけ合えるといった特性のためだろうか?

否、である。だがその答えを導き出すために、主人公にはもう一段階、成長してもらわなければならない。と同時に読む者も、自分が立つべきリングはどこにあるのか、拳は生きているか、そして自分が立っているその場所で面白いと笑っていられるのか、自問することになる。

メジャーすぎるので角田光代の小説はこれまで何となく敬遠してきたけど、もったいないことした!




昨年末、博多からの帰りの新幹線で読み始めたわけですが、さすがに新幹線を乗り過ごすようなことはなく。



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by non-grata | 2013-01-09 17:59 | ノリスゴ本

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