おっさんノングラータ

韓国経済入門|『韓国財閥はどこへ行く』感想

年末に『このミス』を読んで後、その年に出版された三津田信三の作品を買うという習慣がこの2〜3年続いています。昨日も『幽女の如き怨むもの』を購入。年末年始の密やかな楽しみにしているのです。テレ東系で放映される7時間時代劇も見なければ。




d0252390_8365121.jpg韓国大統領選が間近に迫っている。先頃、北朝鮮が衛星ロケットという名のミサイル(もともと「飛翔物」という意味なので、ミサイルで間違いないのだけれど)を発射したりしたものだから、対北政策に有権者の関心が集まったと言われるが、それまでは「経済民主化」が一つの争点だったという。経済の民主化とは、財閥だけが潤うんじゃなくて、国民全体に富が分配される経済システムへ移行するということ。サムスンや現代グループ、LGは儲かっているし、韓国経済の成長を牽引しているが、それ以外に属する多数の国民は好況感が感じられていないのだそうだ。最近の報道では、5人の韓国人大学生がいれば、1人は正規雇用、3人は非正規雇用につけ、1人は就職できないと言われているほど。

何故、このような格差社会が生まれてしまったのか? 朝鮮戦争直後は極貧国(1960年頃、韓国ま一人当たりのGDPは76ドル)であったが、軍事クーデターで政権を掌握した朴正熙は第一次経済5カ年計画に着手、炭鉱労働者と看護師を西ドイツに送り出して外貨を獲得してインフラの整備に勤しんだ。その後も時の政権主導で産業の育成が進められ、1973年にGDP404ドル突破(国連が定める貧困ライン=1ドル/日をクリア)。朴大統領がKCIAに暗殺された1979年には一人当たりのGDPは1693ドルに達していた。

サムスンや現代、LG(当時は金星)といった財閥は、その頃に力をつけている。経済の原動力として財閥の力が不可欠であり、財閥に有利な政策がとられていったのだ。

財閥のメリットは、何と言っても強力なリーダーシップによる即断即決が可能なこと。液晶テレビ事業がいけると思えば、製造ラインに集中的な投資を行い、国がそれを後押しする。しかも教条主義に陥ることなく、市場の変化に合わせて微調整も行う。

しかしデメリットも小さくなかった。アイディアや技術力を持つ中小企業があれば、大企業に有利な独占的な契約を結んで飼い殺しにしてしまって育成を阻む(このことは「サムスン動物園」と表現される)。前述したメリットを生かすには、トップに権力が集中する構図をつくらなければならない。そのためにはカネが必要で、不正な蓄財や資金流用も「やむを得なく」行われる。さらにそれを行ったトップは、大統領恩赦で罪に問われることがない──これが不公平感を増大させる。大統領選も近いし、これでは具合が悪い。そんなわけで李大統領は財閥を規制する方向へ舵を取り始めた。

財閥の関係者がベーカリー・チェーンを経営し始めて「町のパン屋さん」を次々に廃業に追い込むとストップがかけられ、中小の商店を壊滅させる大手スーパーマーケットの日曜日の営業を規制した。今後は財閥トップに対する恩赦も見直すという。大統領選において、与党セヌリ党も野党統合民主党も同じ方針を打ち出している。

こうした議論において、著者は気になることとして二つの点を上げている。一つは「財閥は悪」と決めつけている論調。民主化にはコストがつきものだが、必要以上に財閥を叩くことでそのコストが増加しかねるのではないか、という懸念だ。もう一つは経済情勢。IMF危機の時は問題は韓国国内だけだったが、今は欧米の経済の失速(外部の問題)に、少子高齢化(内部の問題)が加わっている。以前のような経済成長は期待しにくい。財閥の力を利用しつつ内需を拡大することが経済の安定化につながるので、民主化は避けられない。けれども下手に財閥の力を弱めて韓国経済を失速させるわけにもいかない。ホント、次の大統領は大変だ。



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by non-grata | 2012-12-18 09:43 | 読書

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