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おっさんノングラータ

メタで叙述なループもの|『リライト』(法条遥)感想

読書時間の殆どは通勤電車の中なんですが、降りなきゃいけない駅についても「もうちょっとこのまま! 続きを読ませて!」と思う一冊に稀に出会います。「乗り過ごしても食いはないすごい本」略して「ノリスゴ本」。




メタで叙述なループもの|『リライト』(法条遥)感想_d0252390_10443022.jpg主人公は14歳の中学生。担任に言われて、用がない限りは誰も近づかない旧校舎に教材を取りに行き、そこで300年後の未来からやってきたという未来人(美少年)と出会う。彼は20世紀末から21世紀初頭に書かれたと推測される小説を読みたくて時空を飛び越えてきたのだと言い、ぼろぼろになった紙片を見せる。それから3週間ばかり、二人は小説を探す。

ところが、二人がいた旧校舎が崩壊、未来人が生き埋めとなってしまう。5秒間だけタイム・リープできる錠剤を手にしていた主人公は10年後に飛び、目の前にあった携帯電話を握り締めて戻ってくる。携帯電話は未来人が持つ端末に通じ、居場所が明らかとなった彼は、警察や救急によって助けられた──過去の改変(リライト)は免れたのである。

10年後、主人公は10年前の自分がタイム・リープしてきた場所に携帯電話を用意する──過去を改変しないために。しかし、いつまで経っても10年前の自分は現れない。

物語は2002年と1992年を行ったり来たりしつつ、そこに主人公が自分の体験をもとに書いたという小説(劇中作)が混じりつつ、しかもその小説には応募した時のものと書き直し(リライト)したものがある。もちろん10年の歳月が過ぎる中で結婚して名字が変わった者もいるので、気をつけておかないと誰のことを書いているのかわからなくなるという罠も用意されている。

「ラベンダーの香り」など、『時をかける少女』へのオマージュも盛り込まれている。何たって時を翔ちゃうのだから。

タイム・リープして、自分自身の過去に直接的な影響を与えることはできないが、バタフライ・エフェクトによって現在と未来は改変(リライト)され得るという世界観が恐い。だって、10年も前の記憶なんてあやふやなものだし、過去は自分に都合の良いように保存されているものだ。それが「実はこうだった」と説明されたら、ああ自分の記憶は間違いだったと考えを改めるかもしれないし、超自然的な力が働かなくても、その新しい認識から自分の今が、未来が変わっていくことだってあり得る。同窓会で久しぶりに級友と話をして、「ああ、あれはそういうことだったのか」と認識を新たにしたことってありません?

畳みかけるように全てが明かされるラストは圧巻。






by non-grata | 2012-11-22 11:20 | ノリスゴ本

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