おっさんノングラータ

フィクションとノンフィクションと|『アルゴ』感想

d0252390_834714.jpg「事実を基にしたストーリー」だが、終盤のスリリングな展開はフィクションかもしれない。ハラハラドキドキしないと映画を観た気がしないという観客のニーズに応えるものだ。当事者の緊張状態は極限に達していたと思われるが、周到に準備された計画であったため、救出作戦は案外すんなり進行したのではないだろか。と思えるくらい、救出作戦に至るまでのプロットが綿密に描かれていた。

冒頭はドキュメンタリー・タッチ。粒子の粗いフィルムが混じり、フィクションとノンフィクションの境界が曖昧にされる。しかしイランで革命が起こり、テヘランのアメリカ大使館が暴徒によって占拠されたのが事実なら、運良くそこから6人が逃げ出し、近隣にあったカナダ大使私邸に逃げ込んだのもまた事実である。逃げ出した6人は見つかればスパイ容疑で銃殺される。カナダ大使も本国から帰還命令を受ける。そこでCIAは救出作戦を立てた。

自転車でトルコ国境まで脱出……冬のイランでそんなことは不可能だ。宣教師に化けたエージェントを送り込む……外国人宣教師はイランにいない。農業指導のスタッフとして……冬なのに? 別居中の息子と電話しながらテレビで『猿の惑星』を見ていたトニー・メンデス(ベン・アレフック)は思いつく。そうだ、中東で映画を撮ることにしよう! 自らも偽スタッフとしてイランに潜入して6人に接触、彼らを監督や脚本家、美術監督やカメラマンに仕立てて脱出するのだ!

ここからは、映画製作の舞台裏がミニ・ドラマとして展開される。偽映画とは言え、イラン当局に確認されてボロが出るようでは話にならない。脚本を吟味し、脚本家協会から映画化権を買い取り、キャスティングも決めて記者発表も行う。新聞に記事も掲載してもらう。ここでメンデスを補佐するのが『猿の惑星』の特殊メイクを担当したジョン・チャンバーズ(ジョン・グッドマン)。グッドマンと言えば、最近では『アーティスト』でも映画製作会社の社長を演じていました。

囚われの6人を偽映画のスタッフとして脱出させるというホラ話の後で、映画づくりのリアルな話が描かれて、これは現実なんだと観る者を納得させる。『猿の惑星』に『スターウォーズ』『宇宙空母ギャラクチカ』など、当時流行ったSF映画の本物の映像やグッズ、コスチュームが登場して、リアリティは嫌でも増される。

メンデスがイランに潜入してからはさながらスパイ映画。身バレすると即処刑という恐怖の中での「お芝居」が始まる。最後はこの作戦(ハリウッド・オプション)が機密指定されたのと同じように、再びドキュメンタリー・タッチに戻って物語は「封印」される。メンデスは栄光なき英雄となったが、何も言わなくても全てを理解してくれる存在が彼にはいたのだった──と、実に盛り沢山な内容ながら散漫になることなく、最初から最後まで飽きさせなかった。満足満足。

ただ一点、残念だったのは(ここから激しくネタバレ注意)、6人よりも家政婦の安否が気になって仕方がなかったこと。彼女がイラクに逃げ込むところを先に見せてもらえていたら、ハリウッド・オプションの成功を心から喜べたのだけれど。



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by non-grata | 2012-11-13 08:59 | 映画

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