地域通貨は根づくか?|『「通貨」はこれからどうなるのか』感想
仕事柄、海外からモノを輸入する立場なので、個人的にはこのところの円高はありがたい限りである。商品の価格が変わらなければ原価率が下がって利幅が広がり、価格競争になったとしてもバッファが大きいぶん、弾力的に調整が利く。反面、円高は輸出企業、特に自動車、家電メーカーにとっては深刻な問題だ。短絡的な景気浮揚策として自国通貨を切り下げたくなる気持ちもわかる。じゃあ、これから日銀が為替に介入したり、円をじゃぶじゃぶ刷って円安になるかと言えばそんなことはない。「1ドル50円時代は必ず来る」というのが本書の主張だ。
それだけ円が強いのではなく、ドルが弱いのだ。既に基軸通貨としての役目は終わり、かつてのポンド同様、誰もドルのことを気にしなくなる時代が到来するかもしれない。海外との取引は今はドル建てが主流だが、今後は円建ての取引も増えてくるだろう。そうなれば、円高を背景としたビジネスの在り方へと企業が体質改善していけばよく、ある日突然1ドル50円になるのでない限りは、日本経済の行く末を悲観する必要はない……はずである。
地域通貨の可能性
本書のタイトルからは、通貨=為替レートがどうなるのか、ということが想起されるが、通貨そのものの将来像についても言及されており、これがなかなか興味深い。基軸通貨なき後、地域通貨が興隆すると予測する。地域通貨とは、わかりやすい例で言えば商店街だけで使える商品券。歴史的には世界大恐慌後のドイツで実際に導入され、本当の通貨を脅かすほどの存在になった(ので潰された)。
この元ネタを考えたのがシルビオ・ゲゼルという人で、商品は時間とともに価値が下がるのに、金だけは価値が下がらない、いや銀行に預けておけば利子で価値が上がることすらある。金も時間の経過に伴って価値が下がるべきだ=とっとと使って経済を回しやがれという「ゲゼル理論」を打ち立てた。
景気が悪いから買い控える。買い控えるからモノの値段を下げる。利益が出ないから給与が下がる。ますます買い控えが進む……というのがデフレ・スパイラル。ゲゼル理論が機能すれば、ため込んでいても金の価値が下がるから使う。モノが売れるから給与も上がる。給与が上がるからますますモノが売れる、ということになる。こうした特質を備えた地域通貨こそが、景気浮揚の切り札になるかもしれない。それは日本国内での地域格差を推進するということにもつながるが。
財政再建への道のり
本書を読むと、どうも円高が続きそうなのは確実なように思えてくる。TPPを推進するアメリカは輸出立国志向であり、そのためにはドル安が有利だ。しかし「政府としてはまだ、ドル安を追求しますとはあからさまに言えない。(中略)いかにドル安追求をしているように見えないでドル安追求をするか、というなんともややこしい方向に進みつつある。それが今のアメリカの通貨政策である」
とは言え、日本の財政が破綻してしまったのでは円高もクソもない。そこで著者は「社会保障と税の一体改革」ではなく、「歳出と歳入の一体性」を考えるべきではないかと主張する。老人が増えて社会保障のコストが上がるのが明白な以上、増税は避けられない。では、どこから税金を取るのか?
右肩上がりに給与が増え、年功序列も守られる高度成長期ならサラリーマンから手っ取り早く税金を巻き上げる今のシステムでも問題はないが、労働形態が多様化して事業主も増え、しかも金持ち外国人も多数、日本で暮らしている。彼らから効率的に、不公平なく税金をいただくとすれば消費税しかない。昔から人の移動が盛んなヨーロッパで消費税が高いのは、このような背景があるという。サラリーマン減税で消費増税。これなら理解もされやすいんじゃないですかね。
しかしグローバリズムの末に地域の時代が到来、というのは、まだよくイメージできないなあ。けれど、「××マルシェ」などの地域イベントが相応に盛り上がっているようなので、ああした賑わいが断続的ではなく継続的に実感できるようなものだろうか。
それだけ円が強いのではなく、ドルが弱いのだ。既に基軸通貨としての役目は終わり、かつてのポンド同様、誰もドルのことを気にしなくなる時代が到来するかもしれない。海外との取引は今はドル建てが主流だが、今後は円建ての取引も増えてくるだろう。そうなれば、円高を背景としたビジネスの在り方へと企業が体質改善していけばよく、ある日突然1ドル50円になるのでない限りは、日本経済の行く末を悲観する必要はない……はずである。
地域通貨の可能性
本書のタイトルからは、通貨=為替レートがどうなるのか、ということが想起されるが、通貨そのものの将来像についても言及されており、これがなかなか興味深い。基軸通貨なき後、地域通貨が興隆すると予測する。地域通貨とは、わかりやすい例で言えば商店街だけで使える商品券。歴史的には世界大恐慌後のドイツで実際に導入され、本当の通貨を脅かすほどの存在になった(ので潰された)。
この元ネタを考えたのがシルビオ・ゲゼルという人で、商品は時間とともに価値が下がるのに、金だけは価値が下がらない、いや銀行に預けておけば利子で価値が上がることすらある。金も時間の経過に伴って価値が下がるべきだ=とっとと使って経済を回しやがれという「ゲゼル理論」を打ち立てた。
景気が悪いから買い控える。買い控えるからモノの値段を下げる。利益が出ないから給与が下がる。ますます買い控えが進む……というのがデフレ・スパイラル。ゲゼル理論が機能すれば、ため込んでいても金の価値が下がるから使う。モノが売れるから給与も上がる。給与が上がるからますますモノが売れる、ということになる。こうした特質を備えた地域通貨こそが、景気浮揚の切り札になるかもしれない。それは日本国内での地域格差を推進するということにもつながるが。
財政再建への道のり
本書を読むと、どうも円高が続きそうなのは確実なように思えてくる。TPPを推進するアメリカは輸出立国志向であり、そのためにはドル安が有利だ。しかし「政府としてはまだ、ドル安を追求しますとはあからさまに言えない。(中略)いかにドル安追求をしているように見えないでドル安追求をするか、というなんともややこしい方向に進みつつある。それが今のアメリカの通貨政策である」
とは言え、日本の財政が破綻してしまったのでは円高もクソもない。そこで著者は「社会保障と税の一体改革」ではなく、「歳出と歳入の一体性」を考えるべきではないかと主張する。老人が増えて社会保障のコストが上がるのが明白な以上、増税は避けられない。では、どこから税金を取るのか?
右肩上がりに給与が増え、年功序列も守られる高度成長期ならサラリーマンから手っ取り早く税金を巻き上げる今のシステムでも問題はないが、労働形態が多様化して事業主も増え、しかも金持ち外国人も多数、日本で暮らしている。彼らから効率的に、不公平なく税金をいただくとすれば消費税しかない。昔から人の移動が盛んなヨーロッパで消費税が高いのは、このような背景があるという。サラリーマン減税で消費増税。これなら理解もされやすいんじゃないですかね。
しかしグローバリズムの末に地域の時代が到来、というのは、まだよくイメージできないなあ。けれど、「××マルシェ」などの地域イベントが相応に盛り上がっているようなので、ああした賑わいが断続的ではなく継続的に実感できるようなものだろうか。
by non-grata
| 2012-11-12 12:13
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