おっさんノングラータ

アイアン・スカイ

d0252390_8294696.jpgナチの残党がどこかに逃げて再起を目論んでいる、というのはよくある話で、有名どころでは『ブラジルから来た少年』であったり、『Nazis at the Center of the Earth』であったり。そのどちらも根拠がないわけではなく(?)、前者はアルゼンチンやブラジルでファシズムがあったし、後者で言えばナチス・ドイツは南極探検を行ったこともある(飛行機から「ここは第三帝国領」を示すパイクを落としただけだと記憶するが)。

じゃあ月は? ロケットの父と言われるフォン・ブラウン博士もいたことだし、パンターの砲塔を積んだ円盤の写真もあるし(もちろんフェイクだ)、月の裏側に逃げたっていいよね。

仮にそんなことができたとして、70年以上、外界と接することなく純粋培養されたナチと、我々が生きるリアル・ワールドとの対比は当然、面白いものとなる。テクノロジーで言えば、真空管で動く巨大なコンピューターに代表されるように、ナチは恐竜的進化を遂げているのに対し、地球のそれはiPhone。スマートになった。ところが、政治はむしろ後退した。

2018年のアメリカ、初の女性大統領となったサラ・ペイリン(がモデル)は再選を目指し、広告代理店を使ってあの手この手を画策する。黒人を月に送り込んだのもその一環(「誰がくろんぼを月へ送れる?」「Yes, She Can!」といったポスターが街のあちこちに貼られている)。ところがその、アポロ何号かが事故に遭って消息を絶つ。そこで現れたのが、月の最終兵器を動かすのに必要な小型コンピューターを収集に地球までやって来た次期月面総統のアドラー准将。彼とその婚約者が唱える国家社会主義ドイツ労働者党のスローガンは、強いリーダーを求める民衆の心に訴えかけるものだった。純粋アーリア人の見てくれもいい。アドラーは選対本部長に選ばれ、広告代理店はサラ・ペイリン(偽)のためにスマートな意匠を用意する。

このあたりの皮肉は、表層的なものに終わっているとも取れるが、現実も歴史の表層的なところをなぞっているようにしか取れないので仕方がない。ここから大いにネタバレになることを予告した上で書くが、それはアメリカが躊躇なく核兵器を使用することや、第四帝国が抗戦能力を失した後、ヘリウム3の採掘工場が月の裏側にあることがわかった瞬間、それまで結束して戦っていた大国が我先に権利を主張して戦争が始まるなど、たちの悪いジョークだけれどもそれが現実だったりするから困る。

単なる悪ふざけの映画かと思えば、随所に見られる皮肉が面白く、個人的にはメカのデザインや戦闘シーンも満足だった。メテオ・ブリッツクリークなあ。

捲土重来はろくなことにはならないので、ラストシーンを見る限り、適度な孤立主義こそ幸せな国づくりにつながるのではないかと嘆息するしかない。



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by non-grata | 2012-10-09 09:31 | 映画

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