おっさんノングラータ

失敗の本質 日本軍の組織論的研究

d0252390_1219250.jpg日本軍が敗退した六つの戦い──ノモンハン、ミッドウェイ、ガダルカナル、インパール、レイテ、沖縄──をケース・スタディとして、日本型組織にその敗因を見出そうという試み。よその会社はどうか知らないが、自分が勤める会社を振り返った時、考えさせられるものがあった。

まずノモンハン戦。この戦いでは最前線、現場、後方の命令系統が不明確だった上に、現場(関東軍)と後方(大本営)の序列も曖昧だった。大本営から国境越えの空襲が禁止されそうになると、明確に禁止される前に関東軍はタムスク空襲を敢行する。敵情を探らないのは日本軍のいつもの悪い癖だが、ノモンハン事件もそうで、戦車、火力不足を伝える最前線の報告を、現場は戦意不足で切り捨てる。

この前の張鼓峰戦では日本軍は辛勝を収めたが、ソ連側は日本軍の夜襲で苦しめられたことに学び、ノモンハン戦では十分な対策をとった。一方、ノモンハン戦では貴重な戦訓を得た筈の連隊長はことごとく戦死、または自決を迫られ、この戦いから何らフィードバックされることはなかったのである。

ミッドウェイ海戦。これはもう、意味不明。戦力の分散に逐次投入という愚を犯しつつ、しかもミッドウェイ島を攻撃することで米空母を誘引、これを撃滅することを目的としながら、現場の南雲中将は当初の計画を変更して武装転換を行い、これが命取りになった。さらに南雲中将は責任を取らされることもなく、「仇を討たせてやりたいから」という理由で機動部隊の司令官を続けた──その後の空母戦では互角に戦っていたから、敗戦から学んだこともあったのかもしれないが。

ガダルカナルは陸海空三軍の戦いであった。島を占領するには陸軍が必要、その陸軍を輸送するには海軍が必要、そしてその海軍を守るのに空軍が必要である。この複雑な立体作戦を指揮するためには、セクショナリズムを取り除いた統合参謀本部的な強力なリーダーシップが必要なはずで、米軍にはできて日本軍にはできなかった。戦争の戦略目標が不明確だったのがその一番の理由。目的がわかっていないのに手段は選べない。そうすると、どうしても手段が目的化してしまうのである。

インパール作戦。もともと成功の見込みのない戦いだったにもかかわらず、声の大きな者の意見が通ってしまって悲劇を招くという好例、いや悪例。しかも、作戦参加の師団長は「無理」と断言するも、それが言えない空気をつくり出したり、作戦の頓挫が途中で明らかになった時も、言い出しっぺが「自分が無理だと感じていることを察して欲しかった」と言い出す始末。

レイテ戦は、日本軍にしては緻密な作戦を練り上げたし、あの時点で万歳する以外にできた最良の作戦だったようにも思えるが、ここでも「目的」の不徹底が裏目に出た。本来はレイテ島に押し寄せる米輸送船団の撃滅が目標だったはずが、敵主力空母が捕捉可能だった時、これを目標にしても良いという拡大解釈が成り立つ命令だったため、かつ、水上部隊指揮官がはなから輸送船団撃滅を考えていなかったために作戦全体が瓦解してしまった。特に大きな組織を動かす時は、明確な「目的」が必要であり、それを周知徹底させなければならない。

沖縄戦も作戦目的が曖昧。本土上陸の時間稼ぎとするのか、それとも航空決戦を挑むのか。沖縄を「浮沈空母」として、来寇する米機動部隊に猛攻を加えてこれを撃滅すれば言うことはないが、日本のどこを探してもそんな力は残っていなかった。ところがその虚妄を捨てきれず、大本営は作戦方針が二転三転、現地軍に混乱をもたらしただけであった。保持していたからと言って使い道のない飛行場を破壊しなかったこと、さらには奪回を命令したのである。

ということで、自分の会社を考えた時、まず「目的」の不明確さが当てはまる。そのため、管理職がイニシアチブを持って「手段」を選択することができない。トップ・ダウンの硬直化した組織になる。市場の状況は変化しているのに、それに対応することができない。「一つの組織が、環境に継続的に適応していくためには、組織は環境の変化に合わせて自らの戦略や組織を主体的に変革することができなくてはならない」のだが。

組織がそれだけグダグダでも、何とか戦を続けられてきたのは、最前線の下士官、兵士の能力が高かったからである──とよく言われ、以前は「他に褒めるところがないからではないか」と訝しがったこともあるが、自分の会社を見るとその指摘は当たっているようにしか思えない。即ち前線の営業マンは、酷寒の満州や灼熱のジャングル、茫漠たる中国大陸で作戦目的もわからないまま戦っている勇敢な兵士のようなもので、彼らの戦術的勝利が続いている限りは、作戦的なちょっとしたつまづきが挽回できてしまう。しかし作戦、あるいは戦略に誤りがある以上、早晩戦術レベルの勝利ではいかんともし難い状況が訪れるのである。

と、そこまで薄々気づいている者たちで何とかしないと。



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by non-grata | 2012-09-18 13:18 | 読書

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