おっさんノングラータ

中国化する日本

d0252390_12522374.jpg19世紀末、アジアでは日本だけが西洋化に成功し先進国の仲間入りを果たした──とは言うけれど、では21世紀になって、どう見ても西洋化していない中国が文句なしの大国になったのは何故か。この漠然とした疑問に明快な答えを示してくれたのが本書だった。

もともとは『文藝春秋』に掲載された対談で、著者が、日本の歴史は中国化(グローバル化)を推進する勢力とそれを阻止する勢力との対立で説明できる、と語っていたことに興味を抱いた。後者は「江戸化」と呼ぶことができる。わかりやすく言えば、前者は政治的には不自由だが経済的には自由、後者は政治的な束縛はないが経済的には制約がつきまとう社会ということになる。中国は、宋の時代にここで言う中国化を達成していたのだから、わざわざ西洋化する必要はない。いや20世紀後半になって西洋が中国化、即ち自由経済を推進したのである。

「明治維新が実のところ日本社会を『中国化』する試みであり、それへの反動たる『昭和維新』が再江戸時代化への挑戦」であり、「明治維新は結局失敗し、昭和維新が成功した」のだという。著者も指摘している通り、「最高の社会主義国家」が日本であったことを考えると、その言説は説得力を持つ。

そこで気になるのは、再江戸時代化に成功した戦後体制崩壊後の日本はいかなる道を歩むのか。これについて著者は、(1)否応なく中国化の波が押し寄せる、あるいは(2)再鎖国して北朝鮮化に挑戦する、という予測を打ち出している。恐らくは(1)が現実のものになろうが、(2)を完全に否定できない。中国化が進むにしても、憲法第9条をワイルド・カードに使った外交は、非常に有効であると思われる。

移民受け入れ問題まで言及されている。移民が増えることで治安が悪化したり、雇用先が奪われたりといったダーク・サイドばかりが強調されるが、人口が減少している先進国は日本に限ったことではないので、社会を維持するためには移民の受け入れが不可欠である。ならば、優れた移民に来てもらえる政策をとるというのが健全な思考というものだろう。

文章は平易でわかりやすく、引用には必ず出典が明示されるなど配慮が行き届いている反面、ネット民に挑発的な表現が目立ったり(いや、もちろん指摘は正しいのだが)、文頭に「なので」が頻発しているのが残念。
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by non-grata | 2012-07-13 13:33 | 読書

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